酒、タバコ、薬品、食品
酒
1851年(嘉永4年)、アメリカで発言力の強かった清教徒(Puritan)のアルコールに対する強い批判からメイン州で最初の禁酒法が制定されたのを皮切りに、20世紀初頭までに18州で禁酒法が実施された。それに加え、男性の飲酒や行状に対する女性から批判が高まって禁酒運動(上左のイラスト:1887年頃)に発展した。第一次世界大戦が始まり経済的な理由で全国的な禁酒法制定を全国的に適用するため憲法が修正され、1920年(大正9年)からアメリカ全土で施行された(上右の写真:酒樽を壊す検査官)。
事実上、禁酒法はザル法で予期通りには機能せず、逆に酒に関連した犯罪が増加した。例えば酒はカナダで合法的に販売されていたのでカナダからアメリカへと持ち込まれ、カナダの経済が爆発的に潤った。
次いで酒の密造や販売が地下ルートで盛んになり、ギャングが介入し、取り締まり側との攻防や、反対に買収、収賄などの馴れ合いが蔓延した。
また、密造酒の取引きは脱税手段として最も有効で、ギャングを含めて彼らの懐を肥やした。
こうした不都合な結果を改めるため、廃止を公約の一つに掲げたフランクリン・ルーズベルト(Franklin D. Roosevelt)が大統領に選ばれ、1933年(昭和8年)12月5日までには禁酒法は廃止された。 禁酒法の施行期間は僅か13年10か月だった。
その禁酒法時代は映画の題材としてもってこいのドラマが多く、マリリン・モンロー、ジャック・レモン、トニー・カーチス等が演じた『お熱いのがお好き(Some Like It Hot)』;ケビン・コスナー、ション・コネリー競演の『アンタッチャブル(The Untouchables)』などが挙げられる。
さて、かくの如く一時は麻薬の取り締まりのように地下に潜っていた『酒類』が陽の目を見るようになった今日まで、アルコールが我々の生活に「欠かすことのできない必需品」に昇格してから、どんな事が起きただろうか?冠婚葬祭には酒は付き物、社交、会合、にも欠かせない有様だ。
一方、飲酒が嵩じてアルコール中毒になった人々は数え切れない。「酒の上で」の失敗は誰でも多かれ少なかれ経験しているであろう。アメリカで自動車事故で殺される人の数は毎年平均5万人と言われ中でも『酔っぱらい運転』による事故は著しい。
このシリーズの最初に私が例に挙げた『悪友』が31才の若さで「事故でなく」死んだのもアルコールの仕業だった。彼の場合、事故死扱いにされたため検死官に解剖された。彼の内蔵は全て老人の如く衰弱していたという報告を受けた。アルコールの害は数え切れないが、老化現象はその一つであることを強調したい。
『酒は百薬の長』と言ったのは誰だか知らないが、多分どこかの呑ん平が『少量の酒は』という言葉を故意に省いてしまったのだと思う。
そして、その酒類(ビール、ワインを総括して)の製造会社が、良からぬ影響の多い商品を全国的に販売することによって巨額の利益を上げていることをお忘れなく。
タバコ
江戸時代にタバコを吸う習慣が輸入され、多分時の将軍がそれを嫌ったのであろうか、禁煙の絶対命令が布告され、日本中から煙が消えた、、、と思っていた。或る商人がある日町を歩いていた時、物陰にいた乞食が密かにタバコを吸っているのを見掛けた。商人はその密やかな行為からタバコの魔力を察知し『禁煙令』は程なく消滅するであろうと予測し、キセルを大量に仕入れて時が至るのを待っていた。商人の思惑は見事に当たって『禁煙令』は解除され、彼が売り出したキセルは飛ぶように売れた。その利益で築き上げた店舗のシンボルをキセルからデザイン化したのが『白木屋』の元祖である(上の写真)。[この話は私の聞きかじりで、不正確かも知れません。正しい詳細をご存知でしたらお報せください。]
1960年代(昭和35年代)以前の映画を観ると、タバコを吸う場面がやたらに多いことに気付く。スクリーンの美男美女がポーズよろしくタバコを吸うシーンは魅力的で、これがタバコの普及に役立ったことは言うまでもない。未成年者だった私は「大人になりたい」願望と、映画スターの喫煙ポーズへの憧れで喫煙の習慣を身に付けてしまった。
10年近く多量の喫煙を続けていた私は、ある切っ掛けで禁煙を試してみた。それから4年間、私は『禁煙状態』の爽やかさを実感していたが、ある日(又々)ある切っ掛けで喫煙を始めて仕舞った。しかし以前に「旨い」と思っていたタバコが「不味い」としか感じられず、それでも喫煙を続けていた。そして私の娘が生まれた夜、産院の待合室でタバコを吸いながら「娘の将来」を考えて「今度こそ」の思いで『断煙』して今日まで、タバコの誘惑は全く感ずることなく過ごしている。
アメリカで『断煙』への社会的な動きは1970年に始まった。医師を含む政府の機関がタバコの宣伝をテレビから追放し、タバコのパッケージに『健康に危険』と表示させることに成功した。酒類の宣伝はまだ続けているが「旨そうに呑み干す」シーンを削除することで妥協しているようだ。
タバコの害は『肺がん』を筆頭に色々な症状の元凶だが、派生的な問題として『第二次喫煙』、、、つまり本人は喫煙しなくても、周りの喫煙者が吐き出す煙を吸い込んで同様な症状を受けてしまうことである。それが大人とは限らず、子供や幼児にまで影響すると言うから始末が悪い。
そうした不都合を反映して、公共の建物内、車内、機内、での禁煙が実施されている。最近ではレストランが自発的に喫煙を断り始めた。多分『嫌煙客(けんえんきゃく)』の比率が増加したからであろうか。
そして、タバコの製造会社が、こうした健康に良くない商品を全国的に販売することによって巨額の利益を上げていることをお忘れなく。
薬品
スーパー歌手、マイケル・ジャクソンの死が「麻薬でない(つまり法律違反でない)」麻酔薬プロポフォール(上左の写真:Propofol)と精神安定薬ロラゼパム(Lorazepam)を多量に併用して摂取したのが原因だったと判明し、お抱え医師がその責任を問われ『不本意殺人』の罪で起訴されている。
そうした特殊な薬品に限らず、処方箋の必要な薬でも医者か看護婦が間違って処方して致命的な結果を招いた事件が度々起こっている。性行為を補助するとの謳い文句で売られているヴァイアグラ(Viagra)その他の性薬品には心臓マヒなどの副作用があり医師と相談して使うこと、となっているが、その注意書きは胡麻粒のようなタイプで印刷され、見落とし勝ちだ。
薬局の棚に並んでいる処方箋なしで買える薬でも油断ができない。特に『痛み止め薬』が商品棚にひしめいているが「痛み」の原因を突き止めないまま痛みを薬でマヒさせる処置は一時しのぎに過ぎず本質的な治療にはならない。
食べ過ぎたら「胸焼け」がするのは当たり前で、大食を控えればよいのに『胸焼け止め』薬を飲んで直ったと思っているのは愚かな限りである。
東洋では「薬九層倍(くすり くそうばい)」という言葉があって、薬ほど利潤の高い商品はないと相場が決まっている。アメリカも例外でなく膨大な宣伝費を投じている上位数社の広告主が軒並み薬品会社だというのも、大多数の消費者たちが、効き目が当てにならない薬の宣伝を鵜呑みにし、その場しのぎの治療に買っているからである。
そして、薬品会社の大半が、こうした健康保全を確約できない薬品を全国的に販売することによって巨額の利益を上げていることをお忘れなく。
加工食品
(上の写真:スーパーマーケットの棚の数々)ドキュメンタリー映画の製作者モーガン・スパーロック(Morgan Spurlock)が2004年、自分の健康を賭してある実験を試みた。ファーストフードの巨大チェーン、マクドナルド(McDonald)で売っている食品の栄養価を疑問に思い、医師の監視の下に、自らマクドナルドのハンバーガーを毎日3食、半年続けてみた。その結果は予想通り、体重は異常に増加し、コレステロール値は危険度に達し、脈拍も速くなっていた。彼は自分の実験を軸にして、アメリカ人の肥満傾向を調べ『私を肥らせろ(Super Size Me)』というフイルムを完成した。それによると、最も肥満人が多いのがデトロイト市で、2番目から8番目までをヒューストン、ダラスなど、テキサス州の7都市が占めていた。 アメリカ人72パーセントが頻繁にマクドナルドで食事することもあって、3人の内2人は平均体重を超え肥満症になっている、という答えも出た。
この監督は、たまたまマクドナルドを槍玉に上げたが、アメリカの食品事情は大方が全ての面で『過剰』の一言に尽きる。『脂肪過多』『糖分過多』の加工食品が溢れ、飢餓で苦しんでいるアフリカの難民のことを考えると何とも申し訳けない気がする。
先ず砂糖だが、白砂糖は精製されて栄養素が抜き取られて化学物質に変化しているから、甘いだけで栄養価値は全くなく糖尿病の原因となっている。その白い甘味がドーナッツを始めとしたあらゆるケーキ類に不必要にベタベタと塗りたくられているのが気になる。
加工食品に使う脂肪は最近では植物性のものを使うようになったが、アメリカ人の大半は伝統的な肉食を止められないから、嫌でも動物性の脂肪をたっぷり吸収してしまう。
どこのレストランでも「大きい」に越したことはないという方針で調理サービス、一人前の皿の食事が、まず普通の胃袋の持ち主だったら食べ切れない。デザートも然り。ケーキ、果物、アイスクリーム、全てが大型である。出されただけ平らげていたら肥らないわけにいかない。
それでは缶詰や瓶詰めの食品を避け、野菜などの材料を仕入れて自分で料理するのがよいのだろうが、誰もが忙しいからなかなか実現し難い。共稼ぎの夫婦が、家庭で料理する時間がないから、つい幼い子供(達)を連れてファーストフードで食事をしてしまう。肥満児が育つ由縁がここにもある。
また、たとえ家庭料理が実現できたとしても、絶対安全の保証はない。昨年、ほうれん草にバイ菌が発見されて一時販売停止になったことがある。バイ菌といえば、ピーナッツ・バターからも発見されたが時既に遅く、多数の学童が腹痛や下痢を起して苦しんだ。
そして、加工食品産業の大半が、こうした健康保全を確約できない食品を全国的に販売することによって巨額の利益を上げていることをお忘れなく。
自己防衛
かくして我々文明人は、麻薬を除いても様々な危険に取り囲まれて生活している。(上の写真:スーパーマーケットの野菜、果物売り場)政府に訴え、デモンストレーションしてかかる悪徳企業を糾弾するのもよかろう。しかし、そうした発言が政府を動かしたり、企業を改心させるには時間がかかるし、果たして成功するかどうか疑問だ。では当面どうしたら良いのであろうか。菜食主義が理想的だが、そこまで徹しなくても次に掲げた自己防衛法は可成りの効果がある。
- 酒:飲まなくて済むものだったらお止めなさい。健康に長生きできます。
- タバコ:吸う理由を考えてみてください。納得できる理由がみつからなかったらお止めなさい。健康に長生きできます。
- 薬品:まず症状の原因を探ってごらんなさい。頭痛の原因は心身の疲れか風邪からです。『痛み止め薬』か『風邪薬』に手を伸ばす前に、水をたっぷり飲んでゆっくりお休みなさい。翌朝までに直っている筈です。薬に頼らない健康が取り戻せます。
- 食品:加工食品をできるだけ避け、肉は鶏肉や魚に、白砂糖は黒砂糖に、白米は玄米に切り替え、手料理を作ってごらんなさい。米の本当の味が判り、料理する楽しみが増え、健康に長生きできます。
騙されたと思わないで試してみては如何。「損はしない」と保証する。 損をするとしたら、酒類、タバコ、薬品、食品を製造している会社の不当な利益が減るだけであろう。
1 件のコメント:
自己防衛、大賛成!!!
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