この小説の主人公であるリスベス・サランダー(Lisbeth Salander)は身長5フィート(約152センチ)足らずのやせた女性で背中にドラゴンの刺青(いれずみ)をしている。自閉症のため社交性はゼロ。学校教育も不十分で皆に知能が低いとみられている。ところが実際はIQがきわめて高く、数学の問題を解くのが趣味でコンピューターを駆使するのはプロ以上にできる。
小説の「さわり」を紹介しよう。
『The Girl with the Dragon Tattoo』は、40年前に消息不明になったスエーデンの大実業家の孫娘を、サランダー(Salander)と彼女を助手にやとったジャーナリスト、ブロムクヴィスト(Blomkvist)が一緒に探す話だが、女性連続殺人事件や、その実業家の会社の経営危機がからんでくる。ブロムクヴィストは殺人犯を追い詰めるが、殺されそうになるところをサランダーに助けられる。三部作の第一部はそれだけで話が完結している。
それに対し『The Girl who Played with Fire』と『The Girl who kicked the Hornets' Nest』は続きものになっている。ブロムクヴィストが発行人になっている雑誌ミレニアム(Millennium)の記者が外国人売春婦を不法入国させる組織を調べているうちに、何者かに殺されるのが事件の発端。凶器にサランダーの指紋がついていたことから、サランダーは警察に追われる身となる。ブロムクヴィストは サランダーの無実を信じて調査をはじめる。
話がさかのぼるが、サランダーの父親ザラチェンコ(Zalachenko)はソビエトからスエーデンへ亡命したスパイで、スエーデン秘密警察がかくまってきた。この秘密警察には知られざる憲法違反行為がいくつかある。ソビエト崩壊後は旧スパイとして価値がなくなった ザラチェンコはスエーデン国籍をもらうが、麻薬や売春中心の犯罪組織を作る。ミレニアムの記者を殺した犯人は誰か?サランダーは無 実か?秘密警察の憲法違反行為は暴露されるのか?
ボクシングできたえたサランダーの動きは敏捷で、その行動は アンジェリナ・ジョリー (Angelina Jolie)演ずる『Tomb Raider』のララ・クロフト(Lara Croft)を思わせる。ラーソンの三部作はスパイ小説ではないが、ジェーソン・ボーン(Jason Bourne) が活躍するロバート・ルドラム(Robert Ludlum) の小説に匹敵するくらいのスリルと面白さがある。日本語訳も出ているということだが、各部ともポケットタイプの上下2冊づつで計6冊になる。英語訳は三部3冊とも出ているので、いずれを選ぶとしても、この夏の読み物としておすすめする。
著者について一言。今春5月にTime誌にのった記事によると、スティーグ・ラーソンは三部作の原稿を出版社に渡して6ヶ月後の2000年11月のある日、彼が主宰する反ファシズム雑誌の事務所へ行くため7階の階段を登ったところで心臓麻痺をおこして50歳で急死した。三部作がベストセラーになることも知らずに!(右はラーソンの伝記本の表紙、左はラーソンの肖像スケッチ)
人口900万のスエーデンで350万部。フランスではハリー・ポッター(Harry Potter)以上の売れ行き。ヨーロッパ、イギリス、アメリカでベストセラー。スエーデン製の映画『The Girl with the Dragon Tattoo』はアメリカの映画館でも最近上映された。ハリウッドはアメリカ版の映画を目下製作中。
本や映画からの収入は1億ドル近くになると予想されていが、誰が相続するのか?まずスティーグ・ラーソンとは生前不仲だった父親が相続権を主張している。一方ラーソンには、結婚してい ないが32年間寝食を共にした実際上の妻、エヴァ・ガブリエルソン(Eva Gabrielsson)がいる。(スエーデンでは結婚すると住所を公表しなければならない。反ファシズムの運動家である ラーソンはお互いの身の安全のため結婚しなかった。) 現在ガブリエルソンとラーソンの親族との間で相続裁判が起きている。
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スティーグ・ラーソンの本を購入なさりたい方は下記からお選びください。
アメリカ在住の方
★『The Girl With the Dragon Tattoo』
★『The Girl who Played with Fire』
★『The Girl who Kicked the Hornets' Nest』
日本在住の方で英語訳をご希望の方
★『The Girl With the Dragon Tattoo』
★『The Girl who Played with Fire』
★『The Girl who Kicked the Hornets' Nest』
日本在住の方で日本語訳をご希望の方
★ ミレニアム1『ドラゴン・タトゥーの女』上、下
★ ミレニアム2『火と戯れる女』上、下
★ ミレニアム3『眠れる女と狂卓の騎士』上、下
1 件のコメント:
アクション、ミステリーに女性の進出が目覚ましい今日この頃です。『強い女』が小柄で美人、おまけに頭の回転が早くて男に負けない拳闘技を使う、というのがべストセラーの秘密でしょうか。
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