2010年6月17日木曜日

イルカ:その余談

高橋 経(たかはし きょう)

ジャック・クゥストウ(Jacques Cousteau)といえば、世界中の海洋を航海し、海洋生物の生態を撮影し、ドキュメンタリー映画を製作したことでよく知られている。1910年6月11日にフランスで生まれた、というから黒沢明と同年で、今年生誕100年を記念したことになる。

1930年代の半ばに防耐水カメラを使用した先駆者で、以後1990年代まで、機材に改良を重ねながら水中撮影に生涯を捧げた。クゥストウ・チームが創った初期の小作品難破船(なんぱせん、又は沈没船:Epaves/Wrecks)』は、カンヌ映画祭で受賞。数年後、第二次大戦中に水雷を取り除く掃海艇の払い下げを入手し、それを改造してカリプソ(Calypso)』号と命名し、撮影航海に役立てた。

1956年に、ルイ・マァル(Louis Malle)と共同製作した長編記録映画沈黙の世界(Le mode du silence/The Silent World)』は、カンヌ映画祭で受賞した他、アカデミー賞のドキュメンタリー部門でも最高賞を獲得した。

その後も数え切れないほどの賞を次々と受けたが、アメリカではジャック・クゥストウの海底の世界(The Undersea World of Jacques Cousteau)』シリーズがCBS、ABC、PBSなどの全国ネットワーク・テレビ網で放映され、巾の広い視聴者を獲得し、いやが上にもその名声は高まった。その後も活動を続け、1997年6月25日87才で亡くなる直前まで次の企画を練っていた。

クゥストウは、映画作りの傍ら、海洋動物保護運動にも積極的に貢献していたことでも知られている。

今回は、そのクゥストウの作品の内、イルカの音声(A Sound of Dolphins: 1967作)』の後半で紹介さ
れていた話題をお届けする。前々回のイルカ:食うか食わないか?と前回のイルカ:食うか食わないか;追記に関連している点にご留意いただきたい。

『イルカの音声』では、クゥ
トウ・チームが科学者の協力を得て、イルカはその甲高い鳴き声で仲間とのコミュニケーションをしていることを突き止めた。その後、アフリカの沿岸の漁村に立ち寄った。

その漁村の住民はアマラガン族(Amarragan)で、彼らは古代からの伝承、イルカの助けで魚を捕える習わしがあった。

村民はイルカが現れるのを心待ちにし、水面を叩いて、魚が跳ねるような擬音を出し、イルカを引き寄せようと試みる。

村民の長老達は、イルカが来るようにと神に祈りながら遠い水平線を見つめる。

「きたぞー」誰かが叫ぶ。確かにイルカの群れが押し寄せて来た。

若者たちは網の用意をする。緊張と期待の一瞬。

ボラの大群イ ルカに攻められ、浅瀬に追い詰められる。時は今!

文字通り、一網打尽。

大漁。

歌え、踊れ、イルカよありがとう
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1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

イルカを捕えて食べる伝統があり、その一方でイルカの助けを借りて魚を捕える伝統がある。古今二人の記録映画製作者たちがそれぞれの伝統をフィルムに収めて公開した。映画の公開を妨害した人びとは、イルカを食べる行為を恥じているからに違いない。