
高橋 経(たかはし きょう)
日本の漁業運営方針や日本人の食生活が、外国人、特に西欧人の関心の的になってから久しい。その関心とは、好意的なものと批判的なものに分かれるが、大方は批判的である。その理由は、乱獲による種族の絶滅を怖れ、保護対策を強化すべきだ、という意見による。

朝日新聞の『天声人語』子は、問題の映画には触れず「、、、町民に中毒症状はないというが、世界保健機関(World Health Organization: WHO)の安全基準を超えた人々が43人もいた▼鯨やイルカを食べる習慣と水銀の「腐れ縁」が、大がかりな疫学調査で確かめられた形だ。鯨は食物連鎖の一大ターミナル。その先にある人間と いう終着駅には、滋養も毒も流れ着く。この限りで、反捕鯨団体の警告には理がある、、、」と警告していた。

『ザ、コーヴ』が、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門で受賞したことに ついて、和歌山県太地町の町長と同町漁業協会の組合長は「漁は県の許可を得て適法、適正に行っている。作品は科学的根拠に基づかない虚偽の事項を事実であるかのように表現しており、授賞は遺憾だ。さまざまな食習慣があり、地域の伝統や実情を理解した上で相互に尊重する精神が重要だ」 とするコメントをそれぞれ発表した。(毎日新聞6月4日付けの記事から)
さて、こうした甲論乙駁を冷静に観察してみると、双方ともに自己の主観を固持したまま、相手の考えに耳を傾けて理解しようという姿勢が全くみられないことに焦燥を感じないわけにいかない。
私は日本で生まれ育った極く平均的な昭和ヒト桁の日本人である。衣食が極端に不足していた時代に成長期を過ごし、クジラ肉を食べ、クジラ革の靴を穿いていた。しかし、イルカを食べる習慣があることについては、この年になるまで全く知らなかった。だからといって太地町の伝統を非難する気はないし、イルカを食べてみたいとも思わない。
私が先ず映画製作者に言いたいのは、イルカを食べる習慣は日本でも珍しい伝統であることを映画の中で明確にしておいてもらいたかったことが一つ。もう一つは、イルカを保護するのは『知性が高いから』というより、イルカが人懐っこく、世界中で多くの人々に愛されているからであることを強調すべきだったと思う。

イルカを食べなければ太地町の人々が餓死してしまうのなら話は別だが。
1 件のコメント:
犬か猫の肉を食べたことありますか?
犬か猫の肉を食べたいと思ったことありますか?
昔の日本人は獣肉を食べない習慣だったことを知っていましたか?
イノシシを『山クジラ』と呼び、ウサギを一羽二羽と鳥並みの数え方をしてこっそり食べていたことを知っていましたか?
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