2009年11月4日水曜日

『おがくず浴』と、カリフォルニア・ワイン

[私(JA Circle の編集者)は3週間に亘る旅行を無事に終え、引き続きブログを再開いたします。過去3週間のドライブ旅行はミシガン州から始まり、15州を横断または縦断する全行程6000マイル(9600キロ)余り、5カ所の国立公園や名所を垣間みて、7名の近親と23名の知人に会い、12軒のモテルに泊まり、晴天、曇天、時に雨や雪に降られ、それでも充実した見聞を抱えて我が家に戻り、ホッと一息ついたところです。 旅行中に収穫した話題は余りにも膨大なので、折りを見て発表いたします。今回は、旅行の折り返し地点に当たるサンフランシスコ北部地方での体験だけお伝えいたします。高橋 経]

『おがくず浴』と、カリフォルニア・ワイン


「だまされた、と思って、、、」と吾が娘に誘われ、気乗りはしなかったが、百聞(ひゃくぶん)は一見(いっけん)に如かずとおがくず浴(Cedar Enzyme Bath)』を体験してみることにした。娘はサンフランシスコに住んで17年、あの上り下がりの急坂だらけの繁華街をタクシーの運転手さながらに走り回り、ゴールデン・ゲィト・ブリッジ(金門橋Golden Gate Bridge)を渡り、間もなく高速道路から外れ、曲がりくねった山道を30マイル(48キロ)ほど北上した。ミシガンではもう霜が下りる季節だどいうのに、その日は快晴で夏を思わせる暖かさだった。

いくつかの小さな村を通り過ぎて、フリーストーン(Freestone)という村に着き、オスモシス(Osmosis)という看板が掛かっているだけで何の変哲もない一軒の建物の中庭に駐車した。娘が受付けで名を告げ、浴衣を着た女中さん(ホステスと言った方が適切かも知れないが)に待ち合い室へ案内され、私たちも浴衣に着替えたところで薬草だというお茶を出された。

女中さんは白人で、日本人の姿は一人も見当たらないのに、その時点で私はふと日本の旅館を訪れたような錯覚を感じた。内装から中庭まで日本風、女中さんの立ち居振る舞いも、しとやかな日本女性のそれであった。彼女は丁寧に入浴の段取りを説明し、別の担当女性(attendant)がお世話をするから、と言い残して消えていった。 先ず浴衣を着た担当女性が現われ、娘を女性用の個室へ案内していった。それから暫く待たされて別の担当女性が現われ、私は男性用の個室へ案内された。そこは10帖間ほどの大きさであろうか、その真ん中に腰高の檜(ひのき)作りの浴槽がどっかと鎮座し、その中に『酵素入り杉のおがくず』が溢れるほど詰まり、真ん中に体がすっぽり入るような凹みができていた。担当女性の指示に従い、いささか恥ずかしかったが観念して浴衣を脱ぎステップを上り『おがくず』の凹みに仰向けに横たわった。そこで担当女性は私の首を除く体全部を『おがくず』で覆い「咽が乾くから、、、」と水を飲ませてくれ、部屋(浴室)から出て行った。(写真の浴客は私ではない)

湿った『おがくず』はぬるからず、ほどほどに熱く、熱気が間断なく肌に沁み込んでいく気分はしびれるような陶酔感があり、一種の無我の境地に入っていった。それから、ほぼ10分毎に3回ほど担当女性が冷たい手拭い(タオルではなく)で顔を拭ってくれた。この『おがくず浴』は隣室のシャワーで洗い落とすことで終ったが、その後、別室に案内され、布団に横になり、ヘッドフォンで和風のムード音楽をたっぷり聴くことで仕上がった。(日本庭園を背景に娘と私)

以上が基本的な入浴パッケージだが、更にマッサージとか、美肌、美顔、などのサービスが要望に応じて用意されている。要するに、この施設の創始者は、日本に滞在している間に禅道をはじめとした伝統的な習慣や特異な入浴法に出会って霊感にうたれ、環境から作法まで修得し、このカリフォルニアのソノマ郡(Sonoma County)に再現させ、事業として成功したようである。手入れの行き届いた日本庭園も巧みに設計され、付随した庭園が浴室から眺められる仕掛けになっているのも(日本の)異国情緒たっぷりである。廊下ですれ違った顧客たちが日本人でないことで、ああここはカリフォルニアだったのだ、と思い知らされ、同時に、アメリカ人の間で徐々に人気を得ていることの実証でもあると理解した。

行き届いたサービスに満足した娘と私は、その筋違いにあるワイン試飲所に立ち寄った。国際的な品質でフランスを退けて優勝したカリフォルニア・ワインの中心地でもある。どちらかと言えば下戸である私も『おがくず浴』の後で一杯という気分になり、娘と共に試飲テーブルに腰を下ろした。

ここもサービス精神に満ち満ちて、若い女性のホステスが色気抜きで5種のワインの経歴や成分を丁寧に説明しながらグラスに注いでくれた。白ブドー酒(Cabernet/Chardonney)が3種、赤ブドー酒(Pinot Noir)が2種、飲み比べ、出来心で赤ブドー酒の瓶を一本を買う羽目になってしまった。

市販の平均価格より10倍もする高級品だったが、『入浴(ふろ)』上りでブドー酒、ちょっと豊かな気分にひたっていた。舐めた程度の試飲で酔ってしまったのに違いない。
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『おがくず浴(Osmosis)』の詳細は、ここをクリック。

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

たまに贅沢をするのもいいでしょう。
骨休めになります。