2010年11月2日火曜日

決定的な瞬間:その今昔

その回顧

今から半世紀以上も昔、1952年(昭和27年)アンリ・カルチェ・ブレッソン(Henri Cartier-Bresson)というフランス人写真家の作品が東京で展示された。ブレッソンの写真の特長が、正に『決定的な瞬間』を捉えていたので展覧会の名も決定的瞬間(The Decisive Moment)』と題され、同時にブレッソンの作品集『決定的瞬間』も販売された。

『決定的な瞬間』の意味を説明するより、その作品をご覧になれば一目瞭然である。

1. キスを交わす二人の足下から見上げる犬の表情を捉えている。 2. 水たまりを飛び越える人。一瞬遅れたら水面に映る人影は崩れてしまう。 3. ワインの瓶を抱えた少年の得意気な表情もさることながら、背景の少女の表情も良い。


『瞬間』とは、1秒はおろか、100分の1秒の前後をも許さない『瞬間』を捉えることで『決定的』となる。当時、画学生だった私は、彼の写真の前に呆然と佇んでその『決定的な瞬間』を捉えた写真家の手腕に息を呑んでいたものだ。

4. 平凡な庶民たちが川辺でピクニック。手前の男性がグラスを満たす瞬間。 5. 恋人同士であろうか、男女の下半身しか見えないが、この写真は雄弁だ。

ブレッソンは1908年(明治41年)8月18日生まれ、展覧会当時が44才の働き盛り、日本を含め世界中を駆け巡り、各国人の営みをレンズを通して撮り続けた彼の作品は、人々に無言にして雄弁に生身の人間性を伝えた。特に写真家に、瞬間の重要性について強い影響を与えた。その決定的瞬間が流行語となり、あらゆる現象に応用された。


アンリ・カルチェ・ブレッソンは、2004年8月3日、96才の誕生日を目前にして亡くなった。


その現代冗談版

以下は、無名の写真家の作品である。『瞬間』もさることながらカメラの撮影の『角度を利用したギャグをお愉しみいただきたい。

小便小僧

「えッ?何ですか?よく聞こえません。」

ポスターは生きている

「おい、こら、待てッ!」

飛行機雲は指先から

多分起こらないであろう『瞬間』の一瞬前

クルマが潰れるゥーッ、、、!

巨人と小人?

首無し青年

マネキン人形の反抗

「これは、これはッ?!」

犬にも読書の秋

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

カメラがデジタル化されてから、写真は万人のものとなり、貴重な瞬間を捉えた素人の写真やビデオがニュースの情報源となり、お茶の間へしばしば登場するようになりました。
貴方の写真もテレビで採用されるかも知れませんよ。