エリック・アシモフ(Eric Asimov)
2010年8月24日付け、NYTから抜粋
2010年8月24日付け、NYTから抜粋
撮影: Rodolphe Escher for The New York Times
フランス、サン・ジュリエン・ベイチェヴェル(St.-Julien-Beychevelle)発
フランス、メドックのグラン・シャトウ(the grand chateaus of the Médoc)など大手のワイン・メーカーに比べたら、ドメイン・ジュ・ジョウガレ(Domaine du Jaugaret)ははるかに小規模なワイン醸造業者である。ワイン批評家が見過ごしてしまう存在だ。案内書にも滅多に掲載されない。こうしたワイン造り業者は将来のことを考えていないように見える。彼らの設備といえば、石造りの小屋が並び、床は土や砂利が敷かれているだけ、壁はキノコのようなカビで覆われている。お世辞のつもりで『古色蒼然(こしょくそうぜん)』と形容しておこう。
こうした外見にも拘らず私には、サン・ジュリエンのドメイン・ジュ・ジョウガレの存在の重要性を無視することはできない。ワインの主流としてシャトウ・ボルドウ(Châteaux Bordeaux:上の地図を参照)の銘柄が高級品のイメージを樹立し、その磨き上げられ、光り輝き、世界的に商業的な成功を収めているが、私見として、ジョウガレに籠められているワイン魂のような『個性』に欠けているように思われる。
そのジョウガレを醸造しているのは、ジャン・フランソワ・フィラストラ(Jean-François Fillastre)で、フランスのワイン造りの伝統を頑固に守り、ブドウを育て、ワインを造っている一人である。
フランス、ボルドウ地方の一郭サン・ジュリエンのドメイン・ジュ・ジョウガレで、フィラストラ家は、350年以上もの間ワイン造りを家業としてきた。
当年67才、ジャン・フランソワ・フィラストラは3.1エーカー(1.25ヘクタール)の土地を6つの区画に分割し、文字通り独りで手入れをしている。
メドック地区では、ブドウをもっとソフトで、みずみずしくして旨いワインを造るべく改良を重ね、そうした新種マルベック(the malbec)の栽培が増えていった。ジョウガレの配合は、専らキャバネ・ソヴィニョン(cabernet sauvignon)が占め、10年以上も熟成させて仕上げている。
フィラストラ家のブドウは、殆どが少なくとも50年以上の年輪を持ち、マルベック種が100本以上も含まれている。
フィラストラは、ワインを古いカシの木樽に30ヶ月ほど寝かせておく。「たいていのワイン造りは18ヶ月ほどで売りに出すけど、私は昔からのやり方を守っています」とのことだ。
年代もののワイン、ドメイン・ジュ・ジョウガレは倉庫に貯蔵されている。フィラストラの生年と同じ1943年(昭和18年)に醸造した67年物は、輝かしく、優雅で、純粋だ。
ジョウガレの壁を覆っている永年のカビ、そして同様に昔ながらの製法を守っている倉庫は、多分今日の衛生管理の基準には合わないであろうが、ワインそのものは思いがけないほど純粋である。
ドメイン・ジュ・ジョウガレはむしろ、カビ臭い石造りでタイル屋根の倉庫、といった環境が適しているようだ。そこにはワイン樽貯蔵室よりやや小さ目な発酵部屋がある。
パイペット(pipette;またはピペット)は樽から試飲する時に使うガラス用具。フィラストラが使用しているパイペットには薄く先細で独特な美しさがある。彼はガラス器も自分で吹いて作る。
ジョウガレのワイン樽は年代ものだから、カシの香りが優しくワインに滲み込む。
なぜフィラストラが先祖代々の伝統を根気づよく守っているのか?という疑問に対して冗談混じりに「私が偏執狂だから」と答える。
フィラストラが妻のクリステル(Chrystel)とシャトウ・ジャン・フォウ(Château Jean Faux)を買い取る前は、 ワイン樽作りで成功していたパスカル・コラット(Pascal Collotte)が経営していた。彼は自分が造るワインに有利と思えることには積極的に投資する。
多くのボルドウの醸造家とは違って、ブドウ園を先祖代々受け継いできたコラット家は建物群を改装するだけの余裕が充分にある。
ブドウ園が地方の風景を占めるボルドウの単一文化の中で、シャトウ・ジャン・フォウのブドウ園は珍しく林の地帯に隣接している。
コラット家のブドウ園では化学肥料を使っていない。なぜ?「私が造ったワインは自分も呑むからさ」とコラットは答えた。
コラット家では、自家で燻製(くんせい)を作り、そのハムを食べる。
燻製の味は、特に全てが自家製だったら、赤でもピンク(red or rosé)でもボルドウ・ワインと良く合う。
---------------------------------------------------------------------
フランス・ワイン購入のご案内
(主にニューヨーク)
フランス・ワイン購入のご案内
(主にニューヨーク)
- CRU D’ARCHE-PUGNEAU Exquisite Sauternes, $50 to $75. (Rosenthal Wine Merchant, New York)
- CHâTEAU ANEY Classically shaped Haut-Médoc, $25. (Kermit Lynch Wine Merchants, Berkeley, Calif.)
- CHâTEAU BEAUSÉJOUR Fruity, earthy Montagne-St.-Émilion, $15 to $30. (Daniel Johnnes Selections/Michael Skurnik Wines, Syosset, N.Y.)
- CHâTEAU DE BELLEVUE Plush, mineral-laden Lussac-St.-Émilion, $25. (Kermit Lynch Wine Merchants)
- DOMAINE DU JAUGARET Profound, old-school St.-Julien, $55 to $100. (Rosenthal Wine Merchant)
- CHâTEAU JEAN FAUX Gulpable red and rosé Bordeaux Supérieur, $15 to $30. (Daniel Johnnes Selections/Michael Skurnik Wines)
- CHâTEAU LANESSAN Classic bistro Haut-Médoc, $20. (Fruit of the Vines, Long Island City, N.Y.)
- CHâTEAU MOULIN DE TRICOT Pleasingly raspy Haut-Médoc; perfumed, intense yet graceful Margaux, $30 to $45. (Rosenthal Wine Merchant)
- CHâTEAU MOULIN PEY-LABRIE Plush, earthy merlot from Canon-Fronsac, $25. (Louis/Dressner Selections, New York)
- CHâTEAU LA PEYRE Fresh, minerally St.-Éstèphe, $40. (Rosenthal Wine Merchants)
1 件のコメント:
家業を継ぐ、、、などということには全く縁の無い私です。「先祖代々の家業」に縛られるのはいやですが、蓄積された知識や技能を守る、という行為は、自分の身の上に起こることが有り得ないだけに羨ましくも思います。
コメントを投稿