2010年3月29日月曜日

『万里の長城』に防火壁

グーグル、中国での営業から撤退

去る1月のこの欄で、グーグル(Google)が中国政府の言論統制に抗議していたことを伝えたが、政府の態度は硬化しただけで何らの妥協点も得られず、遂に先週、グーグルは中国での運営を放棄した。これは『言論の自由』を擁護する見地から高く評価され、ニューヨーク・タイムズはその勇気は賞賛に値する、と評している。(右はグーグルの撤退を惜しみ社の前に花輪を贈る若い中国人たち)

その他、グーグルの撤退に伴って起こって波紋は複雑だ。グーグルの不在によって利益を得る競合企業の数社、発禁なしの検索を名残り惜しむ若い中国人たち、グーグルなしでも世の中は変わらない、とする人々、様々な反応が見られる。


その全てを報告しても、混乱を招くに過ぎないから、ここでは次の評論をもってその結末をまとめることにする。

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グーグル(Google)が中国を去った後の検索事情
ジョナサン・ストレィ;リリー・リー(Jonathan Stray & Lily Lee)
香港発
、3月28日付け、NYTより

中国政府にとって政治的に微妙な話題を、中国人民がネットを通じて検索を始め、それが頂点に達したのは、グーグルが香港で自主統制を外した日であった。中国政府は直ちに行動を起こし、オンラインで同社を賞賛する文章を削除するキャンペーンを繰り広げた。

天安門』、『法輪功(Falun Gong)』、『汚職に関する検索は、グーグルが統制なしの中国語検索を開始した火曜日(3月23日)には、普段の10倍に膨れ上がった。


だが、それは長く続かなかった。一部には、中国人がかかる政治的に微妙な話題に直ぐ飛びつくほど性急に知りたがってはいなかったこと、そしてグーグルの香港発の検索エンジンが中国大陸で殆ど妨害されてしまったからである。

週末における中国の数都市で行ったテストでは、天安門(右の写真か、ここをクリックすると動画が見られます)中国政府要人の名を検索していた人々を、中国政府がグーグルの香港サイト(google.com.hk)で発見し、数分の内に受信を妨害してしまった。他に頻繁に利用される中国の検索エンジン、自主規制をしているバイデュ(百度)は、引き続き受信でき検索できる。

27才のソフト開発技師、ジォング・フアン(Xiong Huan)グーグルが中国から撤退するって聞いたけど、私は気にしていないよ。だって百度があるもの。政府が避けている話題を検索しない限り、今の所はグーグルにしたって同じことさ」という。


そうは言うものの、膨大な数の人々がグーグルの新しい『統制無しサービス』第一日目を利用していた。その内、約250万人が『天安門』に関わる事項を、470万人が法律で禁止されている『法輪功』に関わる事項を検索したという数字がグーグル・トレンズ(Google Trends)グーグル・キーワード・ツール・ボックス(Google Keyword Tool Box)にデータとして記録されていた、ということだ。


とは言え、この人数は4億人の中国人ネット利用者の総数から見たら僅かであり、検索数は二、三日で平常のレベルに戻った。
英語や中国語によるグーグルでの検索は遥かに一般化し、『火曜日』におけるグーグルの利用者は2,000万人に達した。その意味するものは、グーグル利用者は自分たちの知識では得られない『政治的に微妙な情報』を得るため、グーグルに依存し続けたい意志の現われである。

一方、中国政府は、グーグル愛好者たちの感情をインターネットから根絶すべく、その構えを示している。
中国の独立系メディアに精通している独立のジャーナリストで調査員、38才のオイワン・ラム(Oiwan Lam)は、グーグル関連の社交ネットワーク・サイト「ほんの数秒の内に削除されてしまった」と落胆していた。

チャイナ・デジタル・タイムズ(The China Digital Times)は、中国州協議会の情報局(The Chinese State Council Information Office)が全ニュース・サイトに呼びかけ「情報交換、コメント、その他の討議に関する管理は慎重に」そして「グーグルを支持し、花輪を供えたり、グーグルが中国に止まるよう要請したり、激励したり、その他政府の方針に沿わない記事、映像、音響やビデオは削除すべし」と指令した、と伝えている。


中国政府は、微妙な話題の報道には定期的に指示を与え、グーグルの監査には特に厳しい態度をとってきた。


グアンズウ旅行社(Guangzhou travel)サイトのウエブ制作者、ジャヴェン・ヤン(Javen Yang)「金曜日(3月26日)に、グーグルに関わるコメントは全て削除するよう政府から指令を受け、また一般のウエブ制作者も、アメリカの企業で中国から引き揚げる会社に関する事項は削除するよう通告があったようだ」と語っている。


その事実を中国州協議会の情報局から確認をとりたかったが何の答えも得られなかった。


国内のおしゃべり』サイトも間近かに監視され、中国と外国のそれを比較するとその違いに大きな差があるのに気が付く。中国のツイッター(Twitter)が全般的にグーグルの決断を賞賛していたのに引き換え、中国で人気がある討論サイト、ティアニャ(Tianya.cn)では土曜日(3月27日)、ほんの数名がグーグルの名に触れていただけで、全てが控え目か、中立の意見に過ぎなかった。反面、ツイッターは言論統制に反対を叫び続けていた。但し、フェイスブック
(facebook)ユーチューブ(YouTube)もそうだが、中国本土からは特別なソフトを使わないと繋がらない。 全般的に見て、今のところグーグルの撤退は一般市民にさほど大きな影響は与えていないようだ。

中国人がグーグルの新しい『検閲抜き』の検索機能を受信できたとしても、それを読ませたくない政府の妨害により読めなく(多分文字化け)される。国内製のウエブ・サイトは容易に撹乱でき:外国製のサイトは巧妙に張られたファイアウオール(防火壁:firewall)で遮断される。


ラム(Lam)女史に言わせると「グーグルが統制を外したとしても、ファイアウォールを突破できるソフトを使わない限り、一般の利用者は『微妙な報道』を受信することはできません。万里の防火壁長城(The Great Fire-Wall)』が存在する限りはね」ということだ。


中国政府は、かようなファイアウォールの存在や、報道関係やウエブ・サイトに言論統制を指示したことを認めることはあるまい。他の諸外国と違って、インターネットの受信を検閲する中国政府はサイトを妨害した通知も出さず、、、ネットワークが故障して受信ができなかったのだ、とうそぶくに違いない。


究極的に、(中国政府は)無関係を装っている方が、どんなファイアウオールよりも効果的であろう。

北京のセールスマン、ルオ・ペン(Luo Peng)「私はグーグルが中国から完全に閉め出されても心配しません。ユーチューブフェイスブックもそうですが、私の生活に無くても差し支えのないものです。必要とあれば、使えるものを利用するだけのこと」と超然としていた。

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

世界中のインターネット受信者が知っている中国の『政治的に微妙な事項』を自国の人民だけが知らされない、何と言うバカげた言論統制でしょう。