2010年2月4日木曜日

あなたは幸せですか?

『国民の幸福度』世界第1位はデンマーク

原田 直英
(はらだ なおひで)

中央ロータリー・クラブでの講演から


[講演者は、三井物産勤務で永年ヨーロッパ各地に駐在、退社後、国連の職員として勤務していたことがある。現在は自営。]

1995年、欧州諸国を対象とした世論調査で貴方は生活に満足していますか?の問いに対して、デンマーク(Denmark)の国民93パーセントが「満足している」と回答した。この数字は欧州で第一位。当時のデンマークは失業率が13パーセント。良く知られているように、デンマークは福祉国家である。高い税金(消費税25パーセント、所得税は平均60パーセント)は社会に還元されて、教育、医療、入院費は無料。老人ホームも衣食住が年金の範囲以内で確保。失業者に対しては、所得の70パーセントの失業保障が3年間継続。その間、職能教育や給食斡旋プログラムが用意されている。失業者も不安も無く、預貯金も趣味や遊行費以外は必要ないのだ。(左はデンマーク議会。ヨーロッパ連合のメンバー。)

2006年8月、英国レスター大学の社会心理学者が、178カ国の基礎データや国際機関の調査、報告資料を分析、国民の幸福度を順位付けた。その結果、1位デンマーク、2位スイス、3位オーストリア、23位アメリカ、82位中国日本は90位に止まった。人間の幸福度とは、ストレスの無い精神的なゆとり、生活の質(Life Quality)にある。デンマークは自由と平等と博愛が社会哲学であり、国民の価値観。レスビアン、ホモ同士の結婚、売春も合法。人を大切に、人が中心に置かれている。

経済大国、先進技術を誇る日本が、何故90位なのか?ちょっと考えてみよう。

テンション民族の合い言葉「頑張ります」を国中で連呼、年間の労働時間は、欧米に比し1,000時間多く働き、労働人口6,000人の内、60パーセントは鬱病(うつびょう)の傾向、年間30,000人の自殺者、世界最高の人口過密度。肩書き重視の縦割り社会、勝ち組、負け組の競争原理、本音と建て前の裏表社会、保身と気配りの集団主義、、、閉塞感で窒息しそう。幸福度90位もうなずける。


更に云えば、主体性は欠落、個性は集団主義の中に埋没。思考の明確化は未だタブー。平家と海軍と国際派は日本では一流になれない。格好良くて歯に衣を着せず、直言するからだ。


デンマークが福祉過多と高率の税金で、国民の勤労意欲が無いのかと思うが、そうではない。人口僅か530万人の小国が、世界のトップクラスの海運、航空、風力発電(左は海岸沖に建設された風力タービンの列)セメント、医薬品、ビール等の会社、陶磁器、銀製装飾などのブランドがある。

日本人はモノ作りが上手いので世界で最優秀民族だと言う人もいる。今でこそ日本は先進技術で特許の申請が米国を上回るが、近代技術の80パーセントは米国、20パーセントが欧州で発明されたもの。日本人は楽譜があれば演奏は上手で編曲能力は抜群。小型化、軽量化、品質向上、大量生産、コストダウンがお家芸。『創造』と『製造』は違う。働き過ぎのモノ作り、労働者の自己犠牲、忍耐、勤勉、従順などの労働力が資源。労働ダンピングとも言われている。


ある日本の商社がデンマーク製品が日本で好評だったので追加注文した。返事がきたので礼状かなと思ったら断り状だった。製造数が決まっているので、これ以上の生産はできないとのことだった。理由は、デンマークにはない『残業をしなくてはならなかったからだ。 ここに、デンマークの生活文化と、日本企業の利潤優先の価値観の違いがある。(右はデンマークとスエーデンを結ぶ、海峡に架けられた橋)

ウサギカメの競争で、早く走れるウサギを勝ちとするのが日本のコンセプト。ヨーロッパでは、ゆっくり歩いて周囲の景観を見ながら見聞を広めるカメが勝つ。スピードは人間を幸福にはしない。ロハスの思考なのだ。

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

日本にとって最大の難問題は、狭い国土と人口過剰でしょう。それが先の戦争の原因であり、皮肉なことに敗戦して好転したので『経済大国』とまで自惚れてしまい、国の短所をすっかり忘れてしまったのです。
移民に活路を求めたら如何でしょうか。人間至る所に青山ありです。