2012年1月4日水曜日

世相比較学会から一言、二言

北村 隆司(きたむら りゅうじ)
世相比較学会会長
2012年1月吉日

昨年は、大規模「災害」が世界で多発した異常な年でした。特に、東日本大震災、ニュージーランド地震、オーストラリア,タイ、フィリピンの大洪水等、太平洋地帯に集中した天災と、福島原発事故とユーロ圏を襲った人災は、明るい話題を全て吹っ飛ばす程の衝撃でした。
一方、あれだけの大災害にも拘らず、略奪もなく礼儀正しさを失わなかった日本人と日本文化が海外から賞賛を浴びた事は、日本の新しい財産を見つけた感があります。
当学会としても、この異常な年に学んだ事を幾つか取り上げて見ます。

 脱帽するのは「床屋さん」だけの時代
チャーチル
昨年の天災と人災は、何処の国でも政治家や評論家が全く役に立たないことが国際的に証明されました。かつて、政治家や評論家の資質は何かと聞かれた元イギリス首相、ウインストン・チャーチル (Winston Churchill: 1874~1965)
「予測する能力だ。明日どうなるか。1ヵ月後にどうなっているか。1年後に何が起きるか。それらを予測する能力と同時に、予測がはずれた場合に、それを上手く言い訳できる能力が必要だ」と喝破したそうです。流石チャーチルです。
先生方の劣化が酷くて「必ず脱帽しなければならない相手」は「床屋さん」ぐらいの時代になったという事です。
♥ 幸福と成功を考え直す
幸せなブータンの子供たち
昨年は又、世界の『幸福度調査』で常に上位にランクされているブータンの国王夫妻が、わが国を訪れて話題を集めました。発展途上国のブータンが『幸福度』では常に、世界に冠たる先進国の日本を上回っているのは何故か?これに答えるのに専門家は要りません。
「望んだものが首尾よく手に入ったとき、人はそれを成功と言う。では幸福とは?手に入りそうなものだけを望んで満足する状態のことである。」と言う世界のジョーク集の回答が正解でしょう。日本の赤字解消にも役立ちそうな教えです。
日本でも成功ばかりでなく、「大切な物は何か」を教えるべき時代です。

♣ 日本を襲う「一般的危機」
日本の老齢化は益々進み、誕生祝のケーキ代より、ローソク代の方が高くつき、ローソクの火を吹き消すのに、息が切れる年代が急速に増えています。少子老齢化は、社会保障のあり方という難問も突きつけていますが、その解決策は、下の例に挙げた様な数字のマジックに頼るしかなさそうです。

「ある酪農家がその死に際して、三人の息子に十七頭の乳牛の内、長男には半分、次男には三分の一、末っ子には九分の一相続させる事を指示した。処が、指示通りには割り切れない問題が生じた。三人が喧嘩を始めたのを見かねた叔父が、自分の乳牛を一頭提供する事にした。十八頭になればすっきり割り切れる。長男が十八頭の二分の一、つまり九頭を受けとり、次男は三分の一だから六頭、末っ子は九分の一の二頭を受け取った。整理すると、九頭+六頭+二頭、合計十七頭と言う事になった。叔父は嬉しそうに自分の乳牛を引き連れて自宅に帰った」何かのヒントになれば幸いです。

 巨額すぎてピント来ない単位を判り易く説明すると
日本には巨大な公的債務問題が前面に立ちはだかります。これは、誠に深刻な「日本の一般的な危機」の到来です。
Ggantija Temple of Goza; 3600~2500 BC
10億を越える数は大きすぎてピント来ませんが「10億秒前とは1959年。10億分前には、イエス様はまだ御存命中。10億時間前には、我々の先祖はまだ穴居生活をしていた」と言い換えると、1,000兆円を越える公的債務の大きさが実感できると思います。(右の写真は、世界最古といわれるマルタ群島のゴゾ島にある穴居生活の遺跡。推定紀元前3600年〜2500年。)
さて、日本の政府が10億円を支出するのに何時間かかるでしょうか?これが、我々が取り組まねばならない「一般的危機」の課題です。

 ビジン言語がはびこって良いものだろうか?
昨今の日本では、言語が発達していなかった旧植民地などで使われた『ビジン言語(ピジョン・イングリッシュ: Vision English)』が、やたらに流行っています。英語と日本語を勝手に混ぜ合わせて『フュージョン(Fusion)』と言い変え、『クール』と思う日本の世相は何とかならないものでしょうか?

いい年をした大学出のNHKのアナウンサーが、真顔で日英ごちゃ混ぜのビジン言語を使い「イナイ、イナイ、バー」の様な馬鹿げたジェスチャーを入れて出演している姿は、「馬鹿もいい加減にせい」と怒鳴りたくなります。公共放送のアナウンサーに、「Me(私)、中国人あるね」と言う類のビジン言語を許す国が何処にあるでしょう?
KY語がやっと消えた今日、今度はビジン語を流布するNHKの再編が必要かもしれません。

(編集から:上のビデオは、マイクロソフトのプロモーション・ビデオです。『ビジン言語』と直接の関係はありませんが、Vision Englishという点でご参考に、、、。)

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

いつもながら、北村さんのユーモア混じりの手厳しい世相批判にうなずかされます。私は特にブータンの幸福度に、諸手を挙げて賛成です。