2012年1月1日日曜日

日本製アニメの評価


はじめに:ご存知『アニメ』は、英語の『アニメーション(animation)』を和風に短縮したものだが、これが逆輸入(出?)され『Anime』とは『日本製アニメーション』という意味で使われ始めた。アメリカのアニメーションは、ハリウッドの創成期以来、ドタバタ喜劇、ボードビル風の音楽などの短編が主流だった。それが1937年、ディズニー(Disney)が10年掛かりで制作した長編アニメーション『白雪姫(Snow White and the Seven Dwarves)』以来、単独で劇場映画の地位を獲得した。アメリカでの最近のアニメーションは、ピクサー社(Pixar)をはじめ、高度なコンピューター・グラフィックス(CG)を駆使し、超リアルな背景や動きを可能にしたものが多くなった。しかし、一概には言えないが、往年から継承されたドタバタ性は依然として製作の底を流れているようだ。

従って、日本のアニメがアメリカ製と一線を画せるのは、その底に作者の感傷、、、おとぎ話、妖怪、郷愁、環境などに対する、、、感傷が流れていることであろう。その点に新鮮味を感じて一連の日本製アニメを高く評価しているのが、下記マイク・ヘイルのアニメ評論である。

なお、ヘイルの評価は、宮崎駿(はやお)、高畑勳(いさお)、らアニメ作家が結成したスタジオ・ジブリ社の作品が主体となっている。目下、同社の作品15点が昨年末から1月12日まで、マンハッタン、グリニッジ・ヴィレッジ(Greenwich Village)にあるIFCセンター(IFC Film Center, 323 Avenue of the Americas, at Third Street, Greenwich Village; (212) 924-7771)で上映されている。----- 編集:高橋 経

フィルムで語られる日本の物語
評論家マイク・ヘイル(Mike Hale),NYT掲載の覚え書きより抜粋
2011年12月

株式会社スタジオ・ジブリ(註:同社では一語で『スタジオジブリ』としている)は、大監督でありアニメーターでもある宮崎駿によって創作されたアニメ作品を製作する企業として知られている。同社は徳間書店の子会社で、1985年に吉祥寺に設立、2005年4月に現在の小金井市に移転、従業員は300名とのことである。過去4半世紀に亘り、世界中で高い評価を受けたアニメを数々発表した。アメリカのピクサー社の作品(例えば "Toy Story" )は論外とし、私は『最高』の評価を与える。今日までに作品の内、僅か5点が劇場で公開されただけで、他の作品を鑑賞することは、ディスクで鑑賞しない限り一般アメリカ人にとって難しい、というのが現実である。

従って、スタジオ・ジブリ社の作品15点が公開されるということは、アメリカの観客にとってまたとない好機である。

その作品の中には、旧作の『天空の城、ラピュタ(Castle in the Sky)』が含まれている。これは、同社がニューヨークに進出しニューヨーク国際チルドレンズ・フィルム・フェスティヴァル(the New York International Children’s Film Festival)を開催することになったからでもある。(詳しい案内は、GKidsをクリックしてご覧ください。)

アメリカで1999年に『もののけ姫(アメリカ題名:Princess Mononoke)』が初公開され、続いて宮崎作品の傑作『千と千尋の神隠し(Spirited Away)』が、最近では『天空の城』がそれぞれ公開され観客から絶賛を浴びた。私からは、これに付け加える言葉はない。

前記のフィルム・フェスティヴァルでは、スタジオ・ジプリが1984年から2009年までの間に製作した作品全てを回顧上映する予定となっている。(註:これもGKidsでお調べください。)

滅多に観られない1991年製作『おもひでぽろぽろ(米題:Only Yesterday)』は、隅々まで微に入り細にわたって淡く柔らかい画調で仕上げられ、日本製アニメの真髄を観る思いがする。物語は、若い少女が都会から離れた田園で野草を摘み、幼い頃の感傷に浸るという、むしろ日本の古典的な雰囲気を持っている。




1994年作品、高畑勳の『狸合戦ぽんぽこ(米題:Pom Poko)』は環境問題に挑戦するアクションものである。土地開発によって弾圧を受ける野生動物、狸が試みる抵抗である。


れと同様な主題を扱ったのが、1999年制作の『となりの山田くん(米題:My Neighbors the Yamadas)』で、冗談まじりで典型的な家族内の摩擦のできごとを、軽い水彩タッチの画面で余白を残しているのが好ましい。

宮崎と高畑はスタジオ・ジブリの共同創立者だが、フェスティヴァルでの呼び物は、1986年宮崎の最初の作品『天空の城』のシリーズで、『ハウルの動く城(日本題不明、米題: Howl's Moving Castle)』というアクション物。宮崎がテレビ用のアニメを制作していた時代に作ったシリーズで、子供が空を飛び回る冒険物語である。

宮崎が初期の頃に作った、夢想性の豊かな空を飛ぶアクション物が再び浮上してできたのが1992年作『紅の豚(米題:Porco Rosso)』。往年のハリウッドの大監督ハワード・ホウクス(Howard Hawks後期の作品に『リオ・ブラヴォ』がある)が好んで撮ったアクション物を思わせる作品である。違いと言えば、豚が主人公だということであろう。

私の個人的な好みから選ばせていただくなら、宮崎の初期の魅力ある幻想的な作品、1988年の『となりのトトロ(米題:My Neighbor Totoro)』だ。幸せな親子が中心で、ちょっとした出来事から話が展開する。

スタジオ・ジブリの作品の殆どには、そして日本製アニメの典型的な傾向だが、一抹の暗い恐怖の陰が常に存在する。たとえ幼年の子供達に親しく呼びかける姿勢を保っているとしても、こうした『陰』は、我々日常の生活の中に間違いなく潜んでいるものだから避けるわけにはいくまい。また、少女が裸の父親と一緒に入浴するシーンは、アメリカの親達にとって考えられないことだ。しかし、宮崎駿、高畑勳、両氏とも子供に見せられないアニメは作っていないと信じている。


子供達は両親達にせがんで一緒に観劇し、画面から見たことや知識の吸収によって、より優れた鑑賞眼を体得することに違いない。

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

宮崎の作品では、『トトロ』と『神隠し』の2本を観ました。いずれも白人の友人から教えられました。私はツンボ桟敷にいたようです。この機会にスタジオ・ジブリの作品を観たいと思っています。