2010年5月22日土曜日

寿司:あめりかん・スタイル

前回、『可愛い人魚姫』の末路が『刺身』という趣味の悪いオチでしたので、その口直しに、アメリカで静かに広がっている寿司のブームをご紹介いたします。

1950年代、アメリカで日本食の店は大都会でも希少な存在でした。当時は主に日本人が客筋でしたが、1960年代に入ってから、次第に白人客が増え店内を見渡すと日本人客は数えるほど、という現象が起こり、寿司、てんぷらを売り物にする日本料理店が徐々に増え、1970年の初頭にはニューヨークだけでも100軒を越す盛況となり、大小を問わずそれぞれ繁盛していました。


10年ほど前から、大きなスーパーマーケットのデリ・カウンターに、プラスティック折り詰めの寿司が置かれるようになり、その普及振りを見せています。寿司隆盛の原因は、肉食人種が刺身の『美味』に目覚めたことは勿論ですが、肥満に悩むアメリカ人の『健康食志向』が大いに貢献していることは否めません。

また最近、マグロの種族保存運動と相俟って『菜食主義』の台頭で、刺身抜きの寿司が流行り始めたことも見逃せません。以下はNYタイムズに掲載された『手作りスシのお奨め』です。ゴハンの炊き方から教えています。-----編集、高橋

家庭で手作りスシのお奨め

マーク・ビットマン
(Mark Bittman)

5月4日付け、NYTの随筆から抜粋

家庭で自分の手でスシを作るのは左程むずかしい技ではない。魚抜きでいこう。
『手作り』は、プロの技には敵わないが、できないことではない上『美味』の素晴らしさは保証する。『にぎり』でも『海苔巻き』でも、真珠の肌のような銀シャリ、その甘酸っぱさ、その暖かさ、、、これがスシの醍醐味なのだ。つまり、スシの全てはシャリにかかっていることをお忘れなく。

イタリアのリソット(risotto)、スペインのパエラ(paella)など思い浮かべてみるとよい。世界中の米料理と同様、スシは世界共通の、比較的安価な食品でありながら、その料理法や変わった添え物によって特有な個性が生まれてくる。さよう、添え物とは魚肉である必要はないのだ。アボカドでも卵焼きでも充分に賞味できる。


既成の添え物にこだわる必要はない。例えば焼きピーマン、例えばハムの切り身、一風変わった味を試してみたらよい。


魚肉を使わなければ『新鮮さ』を考慮する必要がなくなる。あるいはクロマグロの絶滅を憂慮することもない。また包丁の切れ味や切り方の技術を体得することも要らない。そして、商売ではないのだから、各種の肴を小数に取り揃える無駄も省ける。おまけに、小さな『にぎり』を口に放り込む度に勘定書を心配することもない。食べたいだけのシャリを頬ばったらよい。それは貴方がたが得意とするところだろう。


私はスシの作り方をブルー・リボン(Blue Ribbon)のスシ・バーで会った板前、ウエキ・トシから手ほどきを受けた。私は彼から、最も肝心なシャリの作り方を教わったついでに、何か色々と考えられる『添え物』のヒントを得た。

細目は飛ばして、早速『手作り』にとりかかろう。

まず米を研いで飯を炊く。水にお酒を少々。米酢に砂糖を加えものを、飯を優しくほぐしながらふりかける。酸っぱくなり過ぎないように時々味見してみる。水で手を湿らせ、飯が手の平にべたつかないようにして好みの形に握る。

海苔で包む。

ナス漬け、辛子菜漬け、梅干し、タクアンなどの具『添え物』を乗せたらできあがり。

お好み寿司を盛り付ける、ブルー・リボンを経営するウエキ・トシ

 左はウメとシソの葉。右は焼きキノコ。

ナス、わさび、山芋、ウメ、辛子菜などで、色を添える。

取り合わせ野菜スシ。ブルー・リボンのスシ・バーとグリルで。

ブルー・リボンの野菜盛り合わせの箱寿司。
辛子菜、ゴボウ、アスパラガス、大根、ナス、バターナッツ瓜など。



具(添え物)各種のヒント

アヴォカド;ホーレン草のごま油いため;生あるいは漬けたキュウリ;大根とその類い;ナス漬け;油揚げ豆腐;オリーブ;辛子菜漬け;冬瓜漬け;茹でたアスパラガスその他の野菜;もやし類;角切り豆腐;焼きナス;焼きピーマン、お好みでアンチョビー添え;味付けキノコ;ネギ;卵焼き;茹で卵;ハム切れ;梅干し;ミズガラシ;その他

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

マグロの旨さは格別です。でも菜食主義も捨てたものではありません。