1950年代、アメリカで日本食の店は大都会でも希少な存在でした。当時は主に日本人が客筋でしたが、1960年代に入ってから、次第に白人客が増え店内を見渡すと日本人客は数えるほど、という現象が起こり、寿司、てんぷらを売り物にする日本料理店が徐々に増え、1970年の初頭にはニューヨークだけでも100軒を越す盛況となり、大小を問わずそれぞれ繁盛していました。
10年ほど前から、大きなスーパーマーケットのデリ・カウンターに、プラスティック折り詰めの寿司が置かれるようになり、その普及振りを見せています。寿司隆盛の原因は、肉食人種が刺身の『美味』に目覚めたことは勿論ですが、肥満に悩むアメリカ人の『健康食志向』が大いに貢献していることは否めません。
また最近、マグロの種族保存運動と相俟って『菜食主義』の台頭で、刺身抜きの寿司が流行り始めたことも見逃せません。以下はNYタイムズに掲載された『手作りスシのお奨め』です。ゴハンの炊き方から教えています。-----編集、高橋
家庭で手作りスシのお奨め
マーク・ビットマン(Mark Bittman)
5月4日付け、NYTの随筆から抜粋
マーク・ビットマン(Mark Bittman)
5月4日付け、NYTの随筆から抜粋
家庭で自分の手でスシを作るのは左程むずかしい技ではない。魚抜きでいこう。 『手作り』は、プロの技には敵わないが、できないことではない上『美味』の素晴らしさは保証する。『にぎり』でも『海苔巻き』でも、真珠の肌のような銀シャリ、その甘酸っぱさ、その暖かさ、、、これがスシの醍醐味なのだ。つまり、スシの全てはシャリにかかっていることをお忘れなく。
イタリアのリソット(risotto)、スペインのパエラ(paella)など思い浮かべてみるとよい。世界中の米料理と同様、スシは世界共通の、比較的安価な食品でありながら、その料理法や変わった添え物によって特有な個性が生まれてくる。さよう、添え物とは魚肉である必要はないのだ。アボカドでも卵焼きでも充分に賞味できる。
既成の添え物にこだわる必要はない。例えば焼きピーマン、例えばハムの切り身、一風変わった味を試してみたらよい。
魚肉を使わなければ『新鮮さ』を考慮する必要がなくなる。あるいはクロマグロの絶滅を憂慮することもない。また包丁の切れ味や切り方の技術を体得することも要らない。そして、商売ではないのだから、各種の肴を小数に取り揃える無駄も省ける。おまけに、小さな『にぎり』を口に放り込む度に勘定書を心配することもない。食べたいだけのシャリを頬ばったらよい。それは貴方がたが得意とするところだろう。
私はスシの作り方をブルー・リボン(Blue Ribbon)のスシ・バーで会った板前、ウエキ・トシから手ほどきを受けた。私は彼から、最も肝心なシャリの作り方を教わったついでに、何か色々と考えられる『添え物』のヒントを得た。
細目は飛ばして、早速『手作り』にとりかかろう。
まず米を研いで飯を炊く。水にお酒を少々。米酢に砂糖を加えものを、飯を優しくほぐしながらふりかける。酸っぱくなり過ぎないように時々味見してみる。水で手を湿らせ、飯が手の平にべたつかないようにして好みの形に握る。
具(添え物)各種のヒント
アヴォカド;ホーレン草のごま油いため;生あるいは漬けたキュウリ;大根とその類い;ナス漬け;油揚げ豆腐;オリーブ;辛子菜漬け;冬瓜漬け;茹でたアスパラガスその他の野菜;もやし類;角切り豆腐;焼きナス;焼きピーマン、お好みでアンチョビー添え;味付けキノコ;ネギ;卵焼き;茹で卵;ハム切れ;梅干し;ミズガラシ;その他
1 件のコメント:
マグロの旨さは格別です。でも菜食主義も捨てたものではありません。
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