
先ず、9月22日付けニューヨーク・タイムズに『中国は日本が必需とする資源の輸出を停止し、緊迫感が高まる』という記事がキース・ブラッドシャー(Keith Bradsher)の香港発報告で掲載された。この時点では、中国人船長はまだ拘留中だった。

この報道の要点は、日本が必需とする資源サマリウム(samarium: rare-earth element/metal: 希土類元素/金属:右の写真)が持つ潜在価値や影響について説明している。
世界中でサマリウムは中国で主に採掘され、日本が最大の買い手である。その買い手はトヨタを始め、ソニーのようなハイテク産業が主流で、トヨタの場合にはハイブリッド車プリウスのプロペラ部品(左下の写真)には欠かせない素材なのだ。その他、太陽熱吸収ガラスの製造にも欠かせない。そのサマリウムの輸出を中国が停止したら、日本のハイテ

中国の主導者の一人は「アラブ諸国が世界の石油の鍵を握っているとしたら、中国は世界の希土類元素の鍵を握っている」とうそぶいている。当面の問題は中国対日本に限られているように見えるが、その影響はアメリカを始め、ヨーロッパのハイテク産業にも波及する。
アメリカでもハイテク産業への影響は大きいが、特にサマリウムを必要とするのは、ミサイルの耐熱部分に使うからである。これは軍需上の必要性からで、アメリカでは常に優先される産業であることは言うまでもない。アメリカではカリフォルニア州、マウンテン・パス(Mountain Pass)でサマリウムを採掘していた時期もあった。多分経費の負担が重かったせいであろうか、2002年に休業した。今になってそれを再開する計画が起きている。だが問題は、アメリカで採掘すれば、労働賃金の高い国のこと、当然価格の面で中国産に競合することはできない。
それを見越してであろうか、中国では近年サマリウムの価格を釣り上げ、この報道の時点では1ポンド(0.45キロ)に付き32ドルにまで値上げされた。
その2日後、9月24日付けに発表されたニューヨーク・タイムズの社説『中国、日本、海』によると、中国と日本とは、昔から東シナ海で隔てられていたために外交関係上、摩擦が少なくて済んだ。しかし、その海の真ん中で一旦コトが起きると『領海問題』が浮上し、その解決には議論が百出して中々結着が付け難くなる、とある。 正にその通りで『領海』を巡って目下悶着が進行しつつある。


★ 日本がアメリカに敗れた1945年から6年後の1951年(昭和26年)、占領軍の施政下にあった。更に20年後の1971年(昭和46年)6月、沖縄返還協定が成立すると同時に尖閣諸島も日本へ帰属した。
★ それまで、中国も台湾(中華民国)もその海域にあまり執着はなかったが、1968年(昭和43年)頃、東シナ海に石油およびガス田の開発計画が進められるにつけ『領海問題』が浮上してきて、1970年には台湾が尖閣諸島に『青天白日』旗を立てたりした。
★ そればかりか、南北朝鮮も領海権をほのめかし始めた。
更に9月26日付け、マーチン・ファクラー(Martin Fackler)の寄稿『日本側、中国に(巡視船2隻の)損害賠償を要求』がニューヨーク・タイムズ紙上に掲載された。

その記事によると、日本側は中国に対して、破壊された巡視船の修繕費を要求していたが、サマリウムの輸出停止という圧力に屈し、拘留していた中国漁船の船長を釈放した。それにも拘らず、中国政府は日本側に謝罪を要求している、と伝えていた。 (右の写真:右から2番目が釈放され英雄となった中国人船長ザン・ウィショング[Zhan Qixiong])

不況はともかく、経済的にはアメリカに次ぎ、世界で第2位の中国と第3位の日本という大国間で起こったこの紛糾した事件の解決には可成り難航が予測される。そして、中国が経済的な強みを切り札として外交を有利に進めるであろうことは明白である。
こうして事件の経過を観察していると、奇怪な疑問が次々と涌き出してくる。
★ 先ず事件自体、海上保安庁は「中国船が体当たりしてきた」と言い、中国側は「日本の巡視船がぶつかってきたのだ」と主張している。その時のビデオがある、ということだが、まだ公開されていないようだ。真相は今のところ『薮の中』だ。
★ 船長を逮捕したのは『法を侵した』たからであろう。裁判も判決もなしに違法者を釈放とは、自ら『法をないがしろにした』ことになるが如何なものだろうか?
★ この事件で改めて『領海』とか『領有権』がいずれの国にあるのか、という疑問が生じてきた。前述したように歴史的に見ると尖閣諸島は日本の『領地』であり、その辺りの海域は日本の『領海』であるようだが、その決定的な『領有権』が国際的に認められているのだろうか?その辺をはっきりしてもらいたいものだ。
★ この際、日本にとって最大の課題は、たかが『土』同然の『希土類元素』を売ってもらわず、他の方法でハイテク技術を存続させる方法を考え出すことだ。日本には世界に誇る冶金技術があることを忘れないでもらいたい。
★ 政府要心や経済人たちが、利害損得を優先させて『道理』を放棄するという図は、見るのも聞くのも耐えられない。
一般的に、日本が中国の圧力に屈服するであろう、という悲観的な予想が潜在しているのは残念なことだが、ここは、管内閣の外交手腕の見せ所ではあるまいか。
1 件のコメント:
中国は利害損得以外に、日本に対して戦争中の『南京虐殺事件』なども含めて歴史的に感情的な不満が残っているような気がします。時間をかけてでも、そうしたわだかまりを無くしていきたいものです。
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