東北再生願うハーモニーを
河北新報、2011年6月9日
服部公一さんが合唱曲制作: 山形市生まれの作曲家服部公一さん(78)=神奈川県鎌倉市=が、東日本大震災の復興を願う混声四部合唱曲『みちのく美(うるわ)し』を作った。 (編集註:広辞苑によると「みちのく」とは、磐城、岩代、陸前、陸中、陸奥の5ヵ国の古称。すなわち奥州、東北地方を指す。)
シンプルなメロディーに、津波で被害を受けた岩手、宮城、福島の風景を歌詞に盛り込んだ。「鎮魂」と「東北の再生」を曲に託した服部さんは「みんなで集まり、歌を唱い、前を向くきっかけにできたらいい」と願っている。
服部さんは、甚大な津波被害を受けた仙台市若林区荒浜に親戚がいる。仙台、山形の住民による合唱イベント「仙山コーラス・ジャンボリー」に取り組んだ縁で、仙台に知人も多い。
服部さんは、テレビなどで伝えられる、慣れ親しんだ風景の変わりようにがくぜんとした。知人の家族も津波で家を流された。「自分にできることはないか」と考えていたところ、楽譜を手掛けるカワイ出版(東京)から震災復興事業『歌おうNIPPON』プロジェクトの一環としてオリジナル曲の依頼を受け、五線譜に向かった。
かって三陸の風景を題材にした男声合唱組曲『唐桑の海』を手掛けたこともある服部さん。今回の曲には、失われた風景や大切な人を惜しみつつ、がれきの街で咲くスイセン、力強くそびえる磐梯山や岩手山、蔵王連峰の姿うぃ取り戻そうとする東北の再生をうたった。 混声四部合唱曲だが、無伴奏でも、ソプラノ、アルトの女声二部合唱でも唱える。服部さんは「唱うことを通じ、美しい思い出を取り戻し、前に進む力にしてほしい」と話している。 『みちのく美し』の楽譜はウェブサイト『歌おうNIPPON』プロジェクト<http://editionkawai.jp/utaou>から無料でダウンロードできる。(佐藤素子:原文のまま) ---------------------------------------------------------------------------------------------------
編集から:楽譜(PDF)はこちらにも用意があります。ご希望の方にはメールに添付して無料でお送りいたします。楽譜には下記に表示した歌詩と作曲者の手紙も含まれています。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------
混声四部合唱曲『みちのく美し』
我がふるさとに 生命(いのち)ふたたび
風かおる国 みちのく
がれきの街に 匂う水仙
つらい浜辺に季節はめぐる
とおい磐梯に みどりを求め
そびえる岩手山 光る蔵王
ああみちのくよ とわに美(うるわ)し
燃え上がる生命のくに
波に洗われ 崖はくずれた
去り逝(ゆ)きし友の笑顔
今も聞こえるあの歌声
大地はるかに こだまは響く
ああみちのくよ とわに美し
燃え上がる生命のくに
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作詞、作曲者からの手紙(河合出版のサイトから)
私は山形市の生まれ育ちで、近年東北6県での音楽活動、特に合唱コンサートが多い。今度の被災地にも音楽の友人がたくさんいるし、さらに親戚に被害者もある。だからこんどの災害には他人事でなくこころを痛めている。
義捐金の寄付だけでなく何か私に特にできることはないだろうか、と思案していたところにカワイ出版からこの企画の話、よろこんで直ぐ制作したのがこの作品である。
この作品は混声合唱で書いてあるが、上段( sop. alt.) だけで女声又は同声2部の演奏ができる。ピアノ伴奏だがコード・ネームによりギターでも伴奏可能、それどころか無伴奏でも大丈夫である。
音域が狭く作曲してあるから、ソプラノ・パートをソロ(ユニゾン)で歌って下さってもいい。
この作品が被災地の皆さんの慰め、励まし、希望になることを願っている。
服部公一(きた・ひろし)
(カリカチュアは和田誠)
1 件のコメント:
暗いニュースの数々、先の見えない原発事故の復旧作業。気分が滅入る前に、希望を捨てず、唱って元気を出しましょう。
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