2009年10月5日月曜日

猫を閉じ込めて小鳥を救おう

ナタリー・アンジア(Natalie Angier)
2009年9月28日:NYタイムズ掲載

今年のハロゥイーン(10月末の年中行事)は、早めに我が家へやってきた。

先日、私が窓越しに裏庭を眺めたら、見慣れない黒ネコがのったりと横切っていた。キラリと光る丸い両眼、磨きたての靴みたいにつやつやした毛並み、文句なしに美しい。でも何となく薄気味悪い。そこで私は表へ出て足を荒々しく踏みしめながら「出て行って!」と叫んで、何とかその『魔女のペット』を追い出した。

私は『黒ネコが横切るのを見て』怖れるような迷信家ではない。私はむしろ愛猫家(あいびょうか)だ。でも肉食放浪ネコが、面白半分に小鳥を餌食と狙って我が家の裏庭に図太く侵入してくるといい気持ちではいられない。そうでなくても、近所のネコが何匹も、我が裏庭(の小鳥)に魅かれて寄ってきているのだ。どのネコの飼い主が誰で、そして彼らが申し分ない良い家庭で育てられていることも知っている。また、ネコが小鳥用の水皿や、ヒマワリの種がたっぷり詰まった餌函の周りをうろつくのは彼らの自由であることも判っている。何と言っても今は小鳥が移動する前で忙しく飛び回っている季節なのだ。

近所のネコの飼い主に、我が家の庭をうろつかせないよう苦情を言いたいのは山々だが、付き合いを気まずくしたくないのでそんな勇気はないし、もしそうしたら私は自分のことを棚に上げて、と偽善者呼ばわりされるのが落ちであろう。実を言うと、2年ほど前に死んだ私の飼いネコが、近所をわが物顔にのし歩いていたのだ。その名はクレオ(Cleo:右の写真)、隣家の窓によじ登っギャーギャー鳴きわめいたり、屋根の上を歩き回ったりしていた。飼いネコらしくさせようと家の中に閉じ込めたら、今度は居間を占領して好き勝手に動き回り、最後には家族が音(ね)を上げ、ドアを開けて表へ追いやる羽目になったほどの強者(つわもの)だった。

今になって思い知ったが、クレオを家の中に監禁した時は、ネコの臭いに鼻をつまむほど悩まされ、私自身の居場所を確保するのが精一杯だった。当節、迷いネコ、野良ネコの人口(猫口?)増加を抑えるのに:犬猫処理場へ送る;捕獲法を工夫する;去勢して放す;など色々な提案があるが、ネコに詳しい専門家たちは真っ向から反対する。こと愛玩動物の正しい飼い方となると、愛する自分の猫:クレオを始め、諸々の名前をもつ愛猫たちが、気ままに哲学者ぶってうろついても構わないだろうかという悩みに対して、お役人は一言のもとに「ダメだ」と戒める。ただでも数え切れないほど野良猫がこの界隈にうろついているのに、飼い猫まで『野良ネコ』の行動に参加させてくれるな、という訳だ。それに、美しい歌声を聴かせてくれる小鳥が、毎年何億羽も飼い猫に殺されているというのが実状だ。最近の調査によると、私が住んでいる(典型的な)住宅街はヒナ鳥にとってバミューダ三角海域(Bermuda Triangles: 海難事故が多発した海域として知られている)』ほどに危険極まりない界隈なのだ。


国立動物園(The National Zoo)内にあるスミソニアン、渡り鳥センター(the Smithsonian Migratory Bird Center)の調査科学者、ピーター・マァラ(Peter P. Marra)博士は「ネコは各種の愛玩動物の内で、自由にうろつくことを許されている唯一の動物です。豚は豚小屋に、鶏は鶏小屋に収容され
(犬は表では繋いで)、というのが規則です。何故、ネコだけが時に狂暴さをむき出す自由行動が許されているのか判りません」と指摘する。

そういう指摘はネコにとって少々不公平だと思う。ネコから屋外活動を奪うと、かれらの平均寿命は3年以上も短かくなる。アメリカン鳥類保護協会(The American Bird Conservancy)で保護を支持している副会長、ダリン・シュローダー(Darin Schroeder)「世の親達は幼児を車道で走り回ることを許しません。それと同じことで、社会的に責任を重んずる飼い主もそれと同じ道理でペットを放し飼いにすべきではありません。」と言う。

野生動物を調査しているシュローダーの観察によると「膝の上でおとなしくしているネコは、独りでペロペロと毛並みを整えていますが、
その飼いネコが表を歩き回るようになると雑草のツタのように野性的で侵略的な性向が助長されます。元々アメリカの飼い猫は植民時代以来からの子孫で、中近東の野生の血統を受け継いでいるネコが多く、北米の原住種類とは全く違った性格を持っているのです。その結果、近年の品種は、ネコ特有の密やかな挙動を受け継ぎ損なってしまいました。皆さんの中には、単純にネコの首に鈴を付ければ小鳥の犠牲が少なくなるとお考えのようですが、鈴の音は小鳥にとって何の警鐘にもなりません」とのことだ。

言うなればうろつきネコは潜在的な捕食動物である。飼い主の前では調理された『ネコ用の餌』を食べ、一旦表へでると『腹ごなし』に弱い動物を追いかけ回す。そうした運動は、自然における捕食行為より遥かに狂暴な挙動を見せる。マァラ博士「現在アメリカにうろつきネコ(野良猫+飼い猫)』は推定1億1千7百万匹から1億5千万匹を下りません。北米では最も数の多い捕食動物でしょう」と言う。


かかる飽くなき『弱い動物』への追跡習性にも拘らず、ネコは滅多にイタチやモグラのような害獣(がいじゅう)を痛めつけることをしない。シュローダー「大都会では通説として、ネコはネズミの繁殖を抑えるのに役立っていると言い伝えられていますが、統計によるとネコはあまりネズミを痛めつけてはいないようです。特に市街で悩まされている大型のネズミはネコの遊び相手ではないようです」ということだ。


だが、ネコが小鳥を狙うという事実は噂だけではないらしい。サンタ・クルツ(Santa Cruz)にあるカリフォルニア大学(The University of California)ケヴィン・クルックス(Kevin R. Crooks)、コロラドの野生地帯計画(The Wildlands Project in Colorado)のマイケル・スール(Michael E. Soulé)らの『南カリフォルニアにおけるネコ、コヨテ、雑木に棲む小鳥、など28分類における実態』に関する報告によると、コヨテ(左の写真)の数が多く、ネコの数が少ない地域では小鳥の種類が多かった。コヨテはネコを捕食するが、小鳥を狙うことはしない。コヨテが殆ど不在でネコが横行している地域では小鳥の種類が極端に減っていた、ということだ。

ネコはヒナ鳥を主に狙うようだ。従って、多くの温暖な地帯では、小鳥は危険な成長期を過ごすことになる。巣が狭くなるほど育っても、まだ充分に飛ぶ力は持っていない。それで地面をチョンチョン歩くことになり、薮に隠れて親鳥が餌を運んでくれるのを待っている。たまたま通りかかった人が「かわいそうな小鳥、巣から落ちたのかな」と助けたくなるが「待てしばし、ネコがうようよしている所では、ヒナ鳥がネコの爪に捕まるのが自然の摂理なのです」マァラ博士は止める。


マァラ博士と彼の学生が、ラジオ送信機を使いワシントン州郊外2カ所(ベセスダ Bethesdaタコマ・パーク Takoma Park)でヒナ鳥の生存率を調べて
まとめた報告がある。どちらの街も同じような経済環境で同じような階級層分布だったが、唯一の違いはタコマ・パークにはうろつきネコが多く、ベセスダは街路が多いのでうろつきネコは殆どいなかった、という点だった。結果はお察しの通り、ベセスダでのヒナ鳥の生存率は55パーセントと自然増とほぼ一致し、樹木が茂っている鳥の楽園、タコマ・パークでは僅か10パーセントのヒナ鳥だけが生存できた。

そこで、ネコを表に出さないで彼らを欲求不満にさせないという方法をご紹介しよう。横町ネコ連合(Alley Cat Allies)の創立者で会長のベッキー・ロビンソン(Becky Robinson)は、野良猫を5匹も拾い上げて育てるほどのネコ好きだ。彼女が推薦する方法とは、透明なプラスチックの小屋を窓に取り付け、ネコがそこから『世の中』を眺めることができるようにしてやること。また、金網張りの曲がりくねった檻を庭に置いてやってキャンプとしゃれこんでも良い、といったアイデアである。


最後に、私の新しいネコ、マニィ・ジュニア(Manny Jr.)と名付け、網で囲ったポーチに住まわせ、我が家ができる程度の『追いかけスポーツ』が楽しめるようにしてやった、ということをご報告し、肩の荷を下ろさせていただく。但し、コオロギを追いかけることだけは、まあよかろうと許している。

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

ウサギの繁殖がすごいことは周知の事実だが、ネコの繁殖もウサギに劣らない。私は当地に移転してから9年経つが最初たった一匹だったメスの捨てネコが子孫を繁栄させて今どれほどの数に
増えたか見当がつかない。