
先日、私が窓越しに裏庭を眺めたら、見慣れない黒ネコがのったりと横切っていた。キラリと光る丸い両眼、磨きたての靴みたいにつやつやした毛並み、文句なしに美しい。でも何となく薄気味悪い。そこで私は表へ出て足を荒々しく踏みしめながら「出て行って!」と叫んで、何とかその『魔女のペット』を追い出した。


今になって思い知ったが、クレオを家の中に監禁した時は、ネコの臭いに鼻をつまむほど悩まされ、私自身の居場所を確保するのが精一杯だった。当節、迷いネコ、野良ネコの人口(猫口?)増加を抑えるのに:犬猫処理場へ送る;捕獲法を工夫する;去勢して放す;など色々な提案があるが、ネコに詳しい専門家たちは真っ向から反対する。こと愛玩動物の正しい飼い方となると、愛する自分の猫:クレオを始め、諸々の名前をもつ愛猫たちが、気ままに哲学者ぶってうろついても構わないだろうかという悩みに対して、お役人は一言のもとに「ダメだ」と戒める。ただでも数え切れないほど野良猫がこの界隈にうろついているのに、飼い猫まで『野良ネコ』の行動に参加させてくれるな、という訳だ。それに、美しい歌声を聴かせてくれる小鳥が、毎年何億羽も飼い猫に殺されているというのが実状だ。最近の調査によると、私が住んでいる(典型的な)住宅街はヒナ鳥にとって『バミューダ三角海域(Bermuda Triangles: 海難事故が多発した海域として知られている)』ほどに危険極まりない界隈なのだ。
国立動物園(The National Zoo)内にあるスミソニアン、渡り鳥センター(the Smithsonian Migratory Bird Center)の調査科学者、ピーター・マァラ(Peter P. Marra)博士は「ネコは各種の愛玩動物の内で、自由にうろつくことを許されている唯一の動物です。豚は豚小屋に、鶏は鶏小屋に収容され(犬は表では繋いで)、というのが規則です。何故、ネコだけが時に狂暴さをむき出す自由行動が許されているのか判りません」と指摘する。

野生動物を調査しているシュローダーの観察によると「膝の上でおとなしくしているネコは、独りでペロペロと毛並みを整えていますが、その飼いネコが表を歩き回るようになると雑草のツタのように野性的で侵略的な性向が助長されます。元々アメリカの飼い猫は植民時代以来からの子孫で、中近東の野生の血統を受け継いでいるネコが多く、北米の原住種類とは全く違った性格を持っているのです。その結果、近年の品種は、ネコ特有の密やかな挙動を受け継ぎ損なってしまいました。皆さんの中には、単純にネコの首に鈴を付ければ小鳥の犠牲が少なくなるとお考えのようですが、鈴の音は小鳥にとって何の警鐘にもなりません」とのことだ。
言うなれば『うろつきネコ』は潜在的な捕食動物である。飼い主の前では調理された『ネコ用の餌』を食べ、一旦表へでると『腹ごなし』に弱い動物を追いかけ回す。そうした運動は、自然における捕食行為より遥かに狂暴な挙動を見せる。マァラ博士は「現在アメリカに『うろつきネコ(野良猫+飼い猫)』は推定1億1千7百万匹から1億5千万匹を下りません。北米では最も数の多い捕食動物でしょう」と言う。
かかる飽くなき『弱い動物』への追跡習性にも拘らず、ネコは滅多にイタチやモグラのような『害獣(がいじゅう)』を痛めつけることをしない。シュローダーは「大都会では通説として、ネコはネズミの繁殖を抑えるのに役立っていると言い伝えられていますが、統計によるとネコはあまりネズミを痛めつけてはいないようです。特に市街で悩まされている大型のネズミはネコの遊び相手ではないようです」ということだ。

ネコはヒナ鳥を主に狙うようだ。従って、多くの温暖な地帯では、小鳥は危険な成長期を過ごすことになる。巣が狭くなるほど育っても、まだ充分に飛ぶ力は持っていない。それで地面をチョンチョン歩くことになり、薮に隠れて親鳥が餌を運んでくれるのを待っている。たまたま通りかかった人が「かわいそうな小鳥、巣から落ちたのかな」と助けたくなるが「待てしばし、ネコがうようよしている所では、ヒナ鳥がネコの爪に捕まるのが自然の摂理なのです」とマァラ博士は止める。
マァラ博士と彼の学生が、ラジオ送信機を使いワシントン州郊外2カ所(ベセスダ Bethesda とタコマ・パーク Takoma Park)でヒナ鳥の生存率を調べてまとめた報告がある。どちらの街も同じような経済環境で同じような階級層分布だったが、唯一の違いはタコマ・パークには『うろつきネコ』が多く、ベセスダは街路が多いので『うろつきネコ』は殆どいなかった、という点だった。結果はお察しの通り、ベセスダでのヒナ鳥の生存率は55パーセントと自然増とほぼ一致し、樹木が茂っている鳥の楽園、タコマ・パークでは僅か10パーセントのヒナ鳥だけが生存できた。
そこで、ネコを表に出さないで彼らを欲求不満にさせないという方法をご紹介しよう。横町ネコ連合(Alley Cat Allies)の創立者で会長のベッキー・ロビンソン(Becky Robinson)は、野良猫を5匹も拾い上げて育てるほどのネコ好きだ。彼女が推薦する方法とは、透明なプラスチックの小屋を窓に取り付け、ネコがそこから『世の中』を眺めることができるようにしてやること。また、金網張りの曲がりくねった檻を庭に置いてやってキャンプとしゃれこんでも良い、といったアイデアである。

1 件のコメント:
ウサギの繁殖がすごいことは周知の事実だが、ネコの繁殖もウサギに劣らない。私は当地に移転してから9年経つが最初たった一匹だったメスの捨てネコが子孫を繁栄させて今どれほどの数に
増えたか見当がつかない。
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