北村 隆司(きたむら りゅうじ);ニューヨーク市
2008年に世相比較学会で発表したものを再録
2008年に世相比較学会で発表したものを再録
「日本人は周囲の目を気にしすぎる」とよく言われますが、その割に外国人を知らず、又、外国人同士がお互いをどの様に見ているかについても、関心が薄いのではないでしょうか?今回はジョークを通して、日本像と世相の変化を探ってみました。
来世の役割をずらすと天地の大違い
天国の役割分担:フランス人のシェフ、イギリス人の警官、ドイツ人の機械工、スウェーデン人の行政官、イタリア人の恋人。
そして、この国名をちょっとずらすと:
地獄の役割分担:イギリス人のシェフ、ドイツ人の警官、フランス人の機械工、イタリア人の行政官、そしてスウェーデン人の恋人。
日本人の来世は噂にも出てきません。
男の理想
世界で一番幸福な男:アメリカの給料を取り、中国の料理を食べ、イギリスの家に住み、日本人の女房を持ち、スイス人の会計士を雇い、イタリア人の恋人を持つ。
世界で一番不幸な男:中国の月給で生活し、イギリスの料理を食べ、日本の家に住み、アメリカ人を女房にして、スイス人の恋人を持ち、イタリア人の会計士を雇う。
日本の実像が世界の世相に反映されるには時間が掛かります。戦後最も強くなったものとして、絹からナイロンに変ったストッキングと日本女性が挙げられて数十年経つと言うのに!(上の写真はニューヨークの国連本部)
スープに蝿が入っていたら?
ドイツ人:「充分に殺菌されている」と冷静に考え、蝿を取り除いてからスープを飲む。
フランス人:スプーンで蝿を潰し、出汁をとってからスープを飲む。
中国人:問題なく蝿をすくって口に入れる。
イギリス人:スープを飲まず、ウエーターに皮肉を言って店を出る。
ロシア人:酔っ払っていて、蝿が入っている事に気が付かない。
アメリカ人:ボーイを呼び、コックを呼び、支配人を呼び、あげく裁判沙汰にする。
日本人:周りを見回し、蝿が自分にだけ入っている事を確認して、そっとボーイを呼ぶ。
韓国人:蝿が入っているのは日本人のせいだと叫び、日の丸の旗を焼く。
この様なジョークは、先入観や固定観念を持っていないと通じません。逆に、これ等のジョークが通じた方は、先入観を持っている事になります。
戦後日本の繁栄は、世界の世相にも影響を与え、外国での日本像は『フジヤマ』『芸者』『安物玩具』の国から『高度技術』『物価高』『勤勉』の国へと変りました。
技術水準
日本では、気密性のテストとして猫を一晩クルマの中に入れ、次の日、猫が窒息していれば気密性は充分だと判断します。
ロシアでは、猫を一晩クルマの中に入れ、翌日も猫が車の中に居れば合格です。
品質管理
或る大企業が「不良品は千個に一個以下とする」という条件をつけて、アメリカと日本の業者に部品を発注しました。間も無くアメリカの業者から「不良品を千分の一に抑える事は大変厳しい条件です。納期を延長して下さい」との要請があり、一方、日本の業者からは「作業は順調に進んでいます。ただ、不良品の設計図が届いていません。至急ご送付下さい」と要請してきました。
物価高
東京の喫茶店でコーヒーを頼んだ外国人が、一杯10ドル近くの請求書を見て「普通の国の強盗は、頭にストッキングを被るが、日本の強盗は、足にストッキングしている」と慨嘆して呟いた。
勤勉
アメリカの大学の期末試験で、留学生の鈴木は合格したが、アメリカ人のジョンは不合格だった。ジョンは言った。「試験に合格するように、聖母マリア様にロウソクの火を灯してお祈りしたのに!」それを聞いていた鈴木が「僕もロウソクを灯していたけどね」と言った。「君達日本人も、聖母にロウソクを灯すのかい?」「そうじゃないよ。ロウソクを灯して徹夜で勉強したんだ。」
猛烈社員
アメリカに赴任してきた若手社員に、現地の上司が「明日から週六日、一日12時間は働いて貰う」と宣告した。それを聞いた若手社員は憤然として「はるばる日本から来た私に、パートタイムの仕事をさせるなんてあんまりです。」
サービス残業と言う言葉が無い頃のお話です。
1980年代半ば迄は、日本を畏敬するジョークが圧倒的でした。その頃、先進各国の対日貿易赤字が天文学的な数字に膨らむ一方、日本は行政指導を通じて実質的閉鎖性を強めました。結果として、日本人に対するイメージは「ずるい」「信用できない」「一人よがり」「利己主義」「アンフェアー」へと急速に悪化し、こんなジョークも登場しました。
一石三鳥
我々アメリカ人を「怠け者」「欲張り」「文盲」呼ばわりする日本人から売られた喧嘩は買わねばならない。日本が品質管理やハイ・ディフィニションTVで、我々より優れている現状を逆転するには、日本の弱みを突いてアメリカの強みを生かすしかない。
その秘策とは、我が国メーカーが得意とするLEAD-TV(Low Emission And Definition Television) をアメリカの標準規格として採用する事である。
規格に合格するためには、高価で、静電気の雑音が高く、壊れ易く、画像が頻繁に乱れる条件をクリアーしなければならない。アメリカの得意とするこの種のTVは、日本人労働者に作る事は出来ない。又、この種TVの製造には、日本メーカーは膨大な資金を投じて設備を改造し、部品を大量にアメリカから輸入する必要に迫られる。GMやFORD等の経営トップや労働者、有名大学の教授など、多数のアメリカ人を日本に送り込み、粗悪品の製造ノウハウを教える必要もあろう。この規格の採用で、アメリカの貿易不均衡と失業問題を同時に解決出来る。
画像が不鮮明で、高価で故障が多いTVが出回れば,子供達のTV離れも起こり、教育水準の向上にも役立つ。理想的には、アメリカの弁護士を日本に派遣して、訴訟癖を日本に輸出できれば、アメリカの再興は間違いない。
至難の業(顔の見えない日本外交を揶揄して)
國際会議において有能な議長とは、インド人を黙らせ、日本人を喋らせる者である。(右写真は国連の円卓協議会)
交渉妥結
日本との交渉妥結とは、次の交渉が始まる前の日本的儀式である。
現在も進行中の米国産牛肉交渉の日本政府の姿勢に、北朝鮮の6カ国交渉姿勢とダブらせて想像してみて下さい。
バブル破裂後は、日本人として素直に笑えるジョークがめっきり減りましたので、失われた10年を飛ばして、最近のジョークに眼を向けますと:
省エネ精神
省エネに熱心な日本人が、自分の住む家をようやく決めた。なかなか決まらなかった理由は、街灯が窓の直ぐ傍にある家を探していたからだった。
もったいない精神
寒い日に、日本人はどうする?ローソクの周りに集る。
もっと寒い日にはどうする?ローソクに火をつける。
知財権(中国の反論)
知財権問題を巡って、米中トップ会談が開かれた。中国側は、知財権侵害の張本人は米欧先進国で、中国は被害者だと主張した。特にアメリカの違反が図抜けて多い証拠として、火薬、紙、印刷物の膨大な消費量を挙げ、中国はこれ等の知財権料を貰っていないと抗議した。
ノーハウ時代
アメリカの工場で機械が故障した。如何にしても原因が判らないので日本人技師の力を借りる事になった。優秀な匠として有名なその技師が暫く機械を眺めた後、数ヵ所をハンマーで軽く叩くと機械は元通りに動き始めた。日本人技師は修理代として500万円の請求書を出した。工場長は腰を抜かすほど驚いて「機械を数回叩いて500万円は高すぎる。明細を教えて欲しい」と抗議した。日本人技師は何も言わず、内訳を差し出した。それには、『叩き代1000円、叩き場所捜索技術料499万9千円』と書かれてあった。
規則のあり方
(前提として)
ドイツでは、禁止されている事は禁止される。
イタリアでは、禁止されている事も時には許される。
ロシアでは、許されている事も時に禁止される。
イギリスでは、禁止されている事も、許されている事も、明確に示されてない。
一昔前の総理(さあ誰でしょう)が「悪法も法なり」と豪語した点でドイツ的。禁止されている事も、相手によって時に許す点でイタリア的。騒がれると、許されている事まで禁止する点でロシア的。事件が起こると「検討中です」と答える点でイギリス的。この様に、規則のあり方に各国の特徴を取り入れた日本は、間違いなく国際国家です。
逮捕の理由
東京本社に勤務する、フジヤヴィッチ氏は、いつも始業時刻の10分後に来るので、とうとうKGBに逮捕された。容疑は『怠慢』であった。
彼の札幌工場の同僚、シロチョコスキー氏は、何時も始業時刻の10分前に来るのだが、ある日KGBに逮捕された。容疑は『西側のスパイ』であった。
三重工場の、アカフクノワ嬢は、いつも始業時刻ピッタリに来るのだが、ある日KGBに逮捕された。容疑は『日本製の時計を持っているに違いない』であった。
消費期限は兎も角、風味にまで法律が介在する日本は、KGBに代表されるソ連の権力志向に似ています。
世界のジョークの収集家である大場元財務官は「優れたジョークが生まれる為には、強い権力と、優れた異端の英知が必要だ」と言われました。その点、日本の川柳の源泉は何なのでしょうか?不思議な気もします。
■ サラ川は世相と本音の早見表
■ 2メートル先の席まで15年
■ 不惑とはワクワク感のないことか
■ 父は胃に息子は耳に穴を開け
■ 「課長いる?」返った答えは「いりません」
■ タバコより体に悪い妻の愚痴
■ リストラも労災ですかと聞く社員
■ デジカメのエサはなんだと孫に聞く
短い言葉で、ユーモアとペーソスたっぷりに世相を表現し「サラ川は世相と本音の早見表」その物です。難点は日本の世相が余りに特殊過ぎて、外国人には殆ど理解できない事でしょう。最後に、大場氏の著書から示唆に富んだジョークを拝借しておきます。
予習、先入観、過大な期待
ある大学の医学部の講義で、教授が学生に質問をした。
「人間の身体の部分で、状況によって6倍の大きさになるところは?」
誰も手を挙げないので、教授は最前列に座っていた美人の女子学生に答えるよう促した。彼女は真っ赤になってうつむいてしまった。「誰か、わかる者はいないか?」
後ろの方の男子学生が立ち上がって答えた。「教授,其れは瞳孔です。」
「良く予習して来たね」教授はそう彼を褒めた。教授は教壇に戻る途中、先ほどの女子学生の前で足を止め、
「君に言っておきたい事が三つある。
第一に、私の授業に出る時は予習をよくしてきたまえ。
第二に、先入観を持つのは良くないことだ。
第三に、過大な期待を抱くのは、もっとよくない事だ」と諭した。
このジョークは、日本の教育問題の根幹に触れただけでなく、デリケートな問題を想像させながら、品の悪い言葉が一つもないと言う点で『品格』のあり方の勉強にもなります。
バブル時代、拝金国と嘲笑された日本の国家像も変り続けます。一日も早く、日本に憧れ、日本を尊敬するジョークが復活する事を祈稔して、2008年の世相比較学会の年頭レポートと致します。
北村隆司
註:私が初めて『多民族ジョーク』に触れたのは、1965年頃にニューヨークで購入した『RACE RIOT』という漫画入りジョーク集でした。当時『国際的先入観』に乏しかった私には、半分も理解できなかったものです。本レポートは、私が書きとめてきたジョークに、大場氏の『ビジネス・ジョーク集』や早坂氏の『日本人ジョーク集』、第一生命の『サラリーマン川柳』などを参考にして纏めたものです。北村
1 件のコメント:
『偏見』は、一応棚上げにして読みました。お国柄がカリカチュアライズされている所が可笑しいやら、悲しいやらで、、、とにかく面白いと思いました。
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