今を去ること67年前の1945年(昭和20年)、米英その他連合軍と戦っていた日本は惨敗を喫し、国土の大半は焼失して廃墟と化し、3百万人の生命が犠牲となり、北は樺太を含む島々を、南は沖縄以南の領土を失った。ダグラス・マッカーサー元帥を総司令官とする占領軍が日本の政治を司り、日本軍は全て武装を解除し、天皇は神格を放棄して人間宣言をし、新しい憲法が発布された。
沿岸警備船の訓練に派遣されたアフリカやアジアの代表 |
その新憲法の骨子は、「日本は武力を放棄して『永遠に』平和国家となり、一切の戦争に介入しない」ということであった。しかし、この憲法は『ザル法』だったようだ。敗戦の悪夢が覚めやらぬ内に、非常事態が生じた際の国防、という名目で『自衛隊』が誕生した。経済の復興に伴い自衛隊の軍備は増大し、曽ての大日本帝国陸海空軍の武力を遥かに凌ぐ戦力を備えてしまった。近代的武力で欠けているものといえば、『長距離弾道ミサイル』と『核潜水艦』である。
船内を見学し勉強する代表たち |
だが北朝鮮からの脅威であるミサイルを、未然に空中で爆破してしまう『対空ミサイル』装置は確保している。
それでも自衛隊は、日本独特の天変地異が発生する度に出動し、被災者の救助に当たったため、国民は彼らの『武力』はともかく、『援助活動』には敬意を表し、感謝している。
かくして日本は敗戦以来67年間、世界のどこかで常に起きていた紛争をよそに、憲法を守り『平和国家』を享受し続けてきた。正に、古くはなったが新憲法サマサマである。ところが世界の情勢は、憲法をタテに他国の紛争に無関係でいられなくなった。それは多分、米英をはじめとする『大国』が、紛争に苦しむ『自由国家』を保護するために膨大な予算を費やし、軍隊を送っているのに、『経済大国』である日本が知らん顔をしているのは不都合である、という非難が出てきたため、敗戦以来、今年初めて自衛隊の海外派遣の予算が計上され、東南アジアその他の国々を援助し始めた。
東京湾でパトロールの実習中 |
こうした動向は敗戦で誓った『永遠の平和国家』の理想とは反するものであるが、中国の圧力に屈しないため、という理由もうなずけないことはない。殊に、東シナ海の無人島同然の尖閣島の所有権問題となると、『保護者』である筈のアメリカが後押ししてくれない限り、日本は自力で所有権を護らねばならなくなる。これが野田首相の言い分であり、『自衛隊』を『国防隊』に格上げするだけで、『攻撃』でなくあくまでも『防御』が目的なのだというのである。
同時に『災害援助』から一歩進めて、他国の国防を援助する計画も進められている。その計画の内には、領海の拡張に積極的な中国の圧力から護るための水上飛行機とか、浅い沿岸を警備するに適したディーゼル発動機潜水艦を提供(有料で)することが含まれている。
これに対して国民の反応は半信半疑といったところだ。敗戦から67年経った今日、戦中戦後を体験した世代は2割前後で、以後この割合は減るいことはあっても増えることはない。とは言うものの、『軍国日本』の復活を戦争体験者が反対し、無戦派が賛成しているとは限らない。例えば、石原慎太郎は敗戦当時12才で敗戦の悪夢を体験しているはずだが、尖閣島問題に関する限り好戦的な姿勢を示している。
北京での反日デモ |
中国での激しい『反日デモ』も日本を挑発するに充分な要素だ。
領土問題は尖閣島の他に、竹島問題あり、永年停滞し続けている北方領土、国後(くなしり)、択捉(えとろふ)島など、日本にとっては頭痛の種が山積みしている。
もともと土地も海も、誰のものでもなかったのだから、誰も『所有』することなく、自由に上がって釣りなど楽しむことはできないものだろうか。いずれにせよ、武力で解決することを避けて、外交で妥協してもらいたいものだ。 編集:高橋 経 (写真、地図はニューヨーク・タイムズから。コー・ササキ撮影)
1 件のコメント:
中国と日本の関係…。これを顧みると何千年の歴史があります。尊敬と憎悪が入り乱れた関係、憎しみを忘れて仲良くしたいものです。まず、『南京虐殺事件』の謝罪をしない限り、中国人の根強い「反日」感情が消えることはないでしょう。
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