インドのハイデラバド(Hyderabad)での反米デモ |
事の起こり
ある反イスラム思想のアメリカ人が、予言者ムハマドを主題にした映画を作り、YouTube で流した。それが聖者を侮辱する内容であることから、抗議の反米デモが中東各地に広まり、現地のアメリカ大使館を攻撃して放火し、駐在のアメリカ大使と3人のアメリカ人が死亡するという最悪の事態にまで落ち入った。それについて、9月14日、朝日の天声人語子が下記の通りの評論を掲げた。(原文のまま)
天声人語
今年が生誕300年になるフランスの思想家ルソーが言っている。「理性、判断力はゆっくりと歩いてくるが、偏見は群れをなして走ってくる」(『エミール』今野一雄訳)。偏見に染まるのは早く、こびりついたら容易には消えない▼アメリカ社会のイスラム教への偏見は以前から根強い。2年前の今ごろ、フロリダの教会が世界に向けて「コーランを燃やせ」と呼びかけた。激しい反発がイスラム世界に広がったのは記憶に新しい▼今年に入って、米軍幹部の教育機関で、イスラム教徒の市民には空襲のような無差別攻撃が許される、といった内容の授業が行われていたことがわかった。あからさまな蔑視に驚くが、そうした空気を吸って軍人各層は育つらしい▼そして、また騒ぎである。イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する映像が流れ、怒った民衆の抗議で中東各地は荒れる。引き金になった映像は、炎上を狙って油にマッチを投げたようなものだ。偏見を通り越して、暗い憎悪が透けて見える▼「挑発に乗るな」という指導層の理性の声が細れば、事態はさらに危うくなる。時を同じくしてリビアの米領事館が襲撃された。これはテロらしいが、大使ら4人の落命が痛ましい▼アメリカという国の欠点の一つは「他国を手前勝手に理解すること」だと言われる。それが反発を生んできた。リビアの惨劇を怒りつつ、偏見と独善を消していく努力も望みたい。欲しいものは相互理解。こぶしを開かなくては、握手はできない。
偏見の上塗り
上記の通り、天声人語子は書き出しで『偏見』を糾弾している。偏見を植え付けるのは容易で、偏見に染まるのは早く、こびりついたら容易には消えない、とあった。
それについては全く同感だ。
続いて、「2年前にフロリダの教会が世界に向けて「コーランを燃やせ」と呼びかけた」例を挙げ、一人の狂信者の行為を、アメリカ社会全体の傾向でもあるかのような印象を与えた。
どうやら、『偏見』を糾弾した筆者自身がアメリカ社会に対する『偏見』をお持ちで、その偏見を読者に植え付ける結果を招いてしまったようだ。
「米軍幹部の教育機関で、イスラム教徒の市民には空襲のような無差別攻撃が許される」という軍部の方針はあったのかも知れないが、根拠は至って不確かである。
単純に「アメリカが他国を手前勝手に理解する」「偏見と独善」の国、と決めつけているのは、筆者の自家撞着(じかどうちゃく)、アメリカに対する偏見に他ならない。
1 件のコメント:
「偏見を植え付けるのは容易で、偏見に染まるのは早く、こびりついたら容易には消えない」とは真理である。
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