シャンソン『枯葉』で唱う「The falling leaves drift by the window, the autumn leaves of red and gold」の季節になった。ハロウィーンも近い。私達の住む地域に子供のいる若い家族が最近増えたので、今年は「Trick or treat(トリック・オア・トリット)」に来る子供が多いかもしれない。ハロウィーンで子供に渡すキャンデーはチョコレート・キャンデーが多い。いつも余分に用意するので、残った分は私が朝食後のコーヒーと一緒に食べることになる。
貧しい家庭に育った少年チャーリー・バケット( Charlie Bucket) が買ったチョコレートの包紙に大当たりの金賞が入っていた。チョコレートを買った世界中の多数の子供の中で金賞をあてたのは Charlie を含めてたったの5人。この幸運な子供たちは Willy Wonkaのチョコレート工場へ招待される。色々なものがチョコレートでできた工場内を案内された子供たちは、やってはいけないという約束を破って、こっそりつまみ食いをしたり飲んだりしてしまう。ただ一人 Charlie は約束を破らなかった。Mr. Willie Wonka は Charlie が正直なのを認め自分の跡継ぎに選ぶ。メデタシ、メデタシ。この話はチョコレート工場だから子供たちが楽しむが、これがチーズ工場だったら臭くてメルヘンにならない。
しかしチョコレートは本来大人の嗜好品であった。古代マヤ人にとって神聖な食べものであったチョコレート(ココア)は1500年代にヨーロッパへもたらされ、王侯貴族や富裕階級にココア飲料として供された。フランスの Louis XV皇帝や、稀代の好色家カサノバ(Casanova)はココアに催淫効果(Aphrodisiac)があるということで愛用した。チョコレートはこうした背景や、恋人への高価な贈り物として喜ばれることからロマンチックな愛情表現と結びついた。ただし催淫効果についてはいまではあまり信用されていない。
T.S. エリオット(T.S. Eliot)は、20世紀中に最も傑出した英国の詩人に違いないと思う。彼は「私の人生はコーヒーのサジ加減で測れる」と見事な表現をしている。私は諸手を挙げて共感する。アメリカはニューヨークからサンフランシスコまで、ヨーロッパはスカンジナビアからスペインまで、そして極東は日本、コーヒー党は夜明けからコーヒーなしではその一日が始まらない。熟練した手で、コーヒーの豊かな、艶やかな、カフェインをたっぷり包んだ豆を焙じて、古風な機械ですりつぶし、香り高い琥珀の液体が絞り出される。